2008 Fiscal Year Annual Research Report
貧栄養条件下に成立する脆弱な熱帯林における人為撹乱後の植生回復能力の評価
Project/Area Number |
19780125
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
宮本 和樹 Forestry and Forest Products Research Institute, 四国支所, 主任研究員 (60353877)
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Keywords | 熱帯ヒース林 / ケランガス / ポドゾル / 萌芽 / 窒素 / 比根長 / 実生 / 炭水化物 |
Research Abstract |
熱帯ヒース林(ケランガス林)は土壌の上層部が漂泊された珪砂からなる貧栄養な立地環境に成立する森林であり、人為撹乱などにより一度植生が失われると回復が困難な森林といわれている。熱帯ヒース林における、伐採などの人為撹乱からの植生回復能力を明らかにする目的で、主要構成樹種の萌芽能力と実生の根の形態的特性を調べた。対象種は、Dacrydium pectinatiom(マキ科), Hopea pentanervia(フタバガキ科), Tristaniopsis obovata(フトモモ科)の3種である。堀取り調査により実生の根の形態的特性を比較した結果、TristaniopsisとHopeaは、Dacrydiumに比べて個体に占める細根(直径2mm以下)の割合が大きく、特にTristaniopsisは比根長(乾燥重量あたりの横長)がDacrydiumと比べて有意に長かった。比根長は土壌水分や栄養塩の吸収の指標とされており、Tristaniopsisの実生の細根は、土壌資源の効率的な利用に適した形態であることが示唆される。HopeaとTristaniopsisの稚樹・親木サイズの個体について幹の伐採から8カ月後の萌芽の出現頻度を調査した結果、Hopeaの旺盛な萌芽が観察された。一方Tristaniopsisでは、ほとんど萌芽がみられなかった。根と幹に含まれるデンプンおよび可溶性糖分の濃度を調べた結果、いずれの濃度においてもHopeaはTristaniopsisやDacrydiumよりも有意に高かった。また、Hopeaにおいて、伐採直後と伐採から8ヶ月後のデンプン濃度を比較した結果、有意な減少が見られた。これは伐採後に残った幹および根に貯蔵されていたデンプンが萌芽に利用されたことを示している。以上のように、熱帯ヒース林の主要構成樹種は根の形態や萌芽特性など、異なる更新特性を有することで特有の貧栄養環境に適応していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)