2007 Fiscal Year Annual Research Report
半数体組織を利用した、針葉樹集団における遺伝的動態の解明
Project/Area Number |
19780131
|
Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
岩泉 正和 Forestry and Forest Products Research Institute, 林木育種センター遺伝資源部保存評価課, 研究員 (50391701)
|
Keywords | 雌性配偶体 / 遺伝子流動 / アカマツ / 種子散布 / 花粉飛散 |
Research Abstract |
1.半数体組織の利用による、遺伝子流動把握への有効性(Iwaizumi, et. al.2007) 針葉樹集団において、種子の雌性配偶体(種子親由来の半数体組織)の利用により、散布種子の花粉親および種子親の両由来親をどのくらい正確に特定できるのかを把握するため、アカマツの天然集団内で採取した種子を対象に、胚(2倍体)および雌性配偶体の組織別にDNA分析を行い、雌性配偶体の半数型の有(以下「MH法」)無(「従来法」)による2通りの方法で両由来親の特定解析を行った。解析を行った計204種子のうち、調査地内での各由来親の存在の有無やその調査地内での正確な特定が可能であった種子数は、従来法では計101種子(49.5%)であったのに対し、MH法では計188種子(92.2%)であり、MH法により両由来親特定の精度が向上した。アカマツのような、翼を持ち、高い散布能力を有する種子を生産する樹種については、遺伝子流動における花粉飛散と種子散布の両者を同時に評価することが重要と考えられるが、上記の結果から、当樹種の遺伝子流動の把握にはMH法のような分析手法が有効であることが示唆された。 2.アカマツ天然集団における4年間の遺伝子流動(岩泉ほか2008) 上記集団において、花粉飛散や種子散布の両者を介した遺伝子流動やその年次変化を把握するため、1.で述べた分析手法により、2003年〜2006年の4年間にわたり採取された自然散布種子(計1,235種子)を対象に両由来親の特定解析を行った。調査地内で由来親が特定されず、概ね100m以遠の親からの飛散・散布と推定された種子は、花粉親では4年間で約63%(2004年)〜73%(2003年)であり、花粉の飛散範囲には有意な年次変化がみられた。一方、種子親については4年間を通じて約2割であり、長距離の種子散布が一貫して、少なからぬ割合で観察された。これまで、針葉樹集団における遺伝子流動の把握は主に花粉飛散に焦点が向けられてきたが、今回、花粉飛散と種子散布の両者を同時に把握したことにより、アカマツの種子散布による遺伝子流動も無視できない大きさであることが示唆された。
|
Research Products
(6 results)