2008 Fiscal Year Annual Research Report
エマルション系接着剤の粘弾性的な流動特性と木材組織への浸透
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19780132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀 成人 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (80313071)
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Keywords | エマルジョン / 接着剤 / 木材 / 粘弾性 / 浸透 / 共焦点走査型レーザー顕微鏡 / アンカー効果 / 投錨効果 |
Research Abstract |
木材の接着を説明する重要な考えの1つに、木材用接着剤が木材組織へ浸透し、そこで固化することで発現する機械的接着がある。この考えに沿って、レオロジー流動を示すエマルジョン系接着剤が、どのように木材組織へ浸透するか解明するのを本研究課題の目的とする。 課題1 : API接着剤がどの様に、そしてどの程度に被着木材へ浸透しているかを共焦点レーザー顕微鏡で観察した。ここで、おいまさ面で接着した試験片の木口面を観察している。針葉樹と広葉樹とを被着試料として、それぞれの組織構造および抽出成分の違いに注目して検討を行った。概して、針葉樹、または抽出成分が多いため接着剤との濡れ性が悪い被着材では、木部への接着剤の浸透量が少なかった。また、接着剤は接着面から数個分の細胞内腔への浸透とともに、接着面から遠い導管・仮導管・放射組織への浸透も観察された。接着剤の浸透が少ない試料群での接着強さは一概に低い傾向を示した。本検討から、API接着剤での木部浸透と接着強さとの間に関連性があることを再確認した。 課題2 : 木材接着体の中でのイソシアネート系木材接着剤の分布を、レーザー顕微鏡で観察した。被着材がマカバのような広葉樹の場合、道管を伝って接着層から遠い位置まで接着剤が浸透する。顕微鏡像の画像解析から、接着層中心からの距離と接着剤の存在密度との散布図を作成した。この散布を正規分布関数の二項和へあてはめたところ、r2=0.936の良い回帰関数が得られた。二項のうち、一つは接着界面付近の木部へ進入した接着剤または接着層の密度関数、もう一つは木材の道管を伝って進入した接着剤のそれに帰属できる。回帰関数の係数から接着剤分布の分散が算出でき、この値が接着剤の浸透度合いを評価する基準になることを見いだした。
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