Research Abstract |
本研究課題では,農業水利コンクリート構造物が長期供用される過程で生じる劣化の詳細調査を実施し,標準耐用年数に至るまでの各種劣化状況を把握することで,供用年数と性能低下の関係を材料学的に明らかにするとともに, 各種劣化状況に関する情報の一元管理システムを構築することを目的としている。 本年度は,まず高知県中央部に広がる香長平野を対象として,既設コンクリート水路網の調査及び劣化度診断を試みた。まず,水路網の設計図書類を地元土地改良区および高知県より入手し,建造年度や材料・構造関係の諸元を収集した。続いて,現地調査としては,既設水路に普遍的に現れる変状としてのひび割れ及び劣化としての中性化に注目し,建造年度ごとに局部破壊試験を実施した。その結果,コンクリート水路に現れるひび割れには特定の傾向があり,大部分が温度・湿度の変化に起因するひび割れであることが明らかになった。また,コンクリート水路では常時水中に位置する部分と気中に位置する部分とに分かれるが,部材位置によって中性化深さが大きく異なることを明らかにした。中性化は炭酸イオンの侵入により生じるが,同一部材であっても使用条件が異なれば劣化度も変化することがわかった。 一方,コンクリート水路の普遍的な変状の一つに骨材露出があり,水路の水理性能・構造性能の低下を引き起こすとされる。そこで,実験的に骨材露出の状況を再現し,劣化度診断との連結を試みた。その結果を利用して,コンクリート水路の耐久性診断を実施するうえでの貴重な留意点を明確にした。 多種多様な情報一元管理のツールに地理情報システム(G I S)がある。本年度は,その利用性を確認し,どのような情報を管理すべきかを整理し,実際の管理運営上のスキル化を図った。
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