2009 Fiscal Year Annual Research Report
ため池の持つ水質保全機能の定量評価とモデル化に関する研究
Project/Area Number |
19780181
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中桐 貴生 Osaka Prefecture University, 生命環境科学研究科, 准教授 (80301430)
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Keywords | ため池 / 栄養塩類 / 窒素 / リン / 流出削減 / 多面的機能 / 植物プランクトン / クロロフィルa |
Research Abstract |
農地や農業水利施設の持つ多面的機能の1つとして,「ため池による水質保全機能」に着目し,その機能増進に向けての提案を行うことを目的に,大阪府岸和田市神於山地区に位置するため池「傍示池」を事例にして研究を進めてきた.当該研究の最終年度である本年度は,これまでに得られた研究成果と,本年度において新たに行った流域調査ならびにアンケート調査を通じて,「傍示池による水質保全機能を考慮した,集水域における水環境保全のあり方」について検討を行った.本研究の成果の要点を整理すると以下のようになる. ・2003~2005年における傍示池周辺における気象・水文データを用いて,傍示池がその水源となる河川の栄養塩類の流出抑制に寄与していることを実証的に示した. ・琵琶湖沿岸の内湖を対象に開発された閉鎖水域における生態系を考慮した水質推定モデルに,傍示池の水を用いて求めた植物プランクトンにかかわるパラメータを適用すれば,池内の窒素およびリンの動態をある程度再現でき,水質変化予測にも利用できる可能性があることを示した. ・2009年5月~12月にわたって集水域調査を行い,傍示池集水域内における栄養塩類の流出特性や時空間的分布を示すことができた. ・傍示池の受益者へのアンケート調査の結果,受益者は傍示池の水質悪化への懸念が強く,池水の水質保全についても考慮しながら,集水域全体の水環境保全に取り組む必要があることがわかった. ・受益者における傍示池の水質保全意識はかなり高いことから,単に河川の栄養塩類をため池に取り込むことにより水質保全を図るだけでなく,受益者による集水域への汚濁負荷軽減のための活動や,より経済的な池水浄化システムの導入などの,より積極的な水質保全対策が実施可能であると感じられた.
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