Research Abstract |
本研究課題は,保水能・保肥能が乏しい土壌を対象として,施肥窒素の溶脱抑制効果の高いバイオマス資材の混入条件の解明を目的としている.そこで,今年度は,保水能・保肥能が乏しい土壌として島尻マージ土壌,保水能・保肥能を改善する資材としてバガス炭化物(サトウキビの圧搾残渣を炭化したもの)に絞り込み,以下の実験を行った. 1.バガスを400,500,600,700,800℃の5つの炭化温度で2時間炭化し,炭化物を作成した. 2.作成したバガス炭化物と土壌(島尻マージ)の陽イオン交換容量(CEC),全炭素,全窒素,アンモニウム吸着能,硝酸イオン吸着能等を測定した. その結果は,以下の通りである. 1.バガス炭化物の全炭素は,炭化温度が高い方が大きかった.一方,全窒素は,炭化温度が高くなるにつれて小さくなる傾向が見られた. 2.バガス炭化物のCEC測定値は,500℃で炭化したものが最も大きく,炭化温度が600℃以上ではCECが非常に小さかった. 3.バガス炭化物のアンモニウム吸着能は,500℃で炭化したものが最も大きく,CEC測定値との相関が見られた.ただし,炭化物のアンモニウム吸着能は,土壌(島尻マージ)のアンモニウム吸着能と大きく異ならず,炭化物の土壌混入によりアンモニウム吸着能は大きく改善されないと考えられた. 4.土壌(島尻マージ)や600℃以下で炭化した炭化物には硝酸イオンが殆ど吸着されなかった.一方,700℃以上で炭化した炭化物では,明瞭に硝酸吸着能が確認され,700℃以上で炭化したバガス炭化物を土壌に混入することで,硝酸態窒素の溶脱を遅延することが可能と考えられた.
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