Research Abstract |
本研究における主要な対象地を,(1)面積が狭い,(2)丘陵の頂上付近から畑地が始まっている,(3)所有者に無償で観測機器類の設置を許可された,といった理由から愛知県三好町の傾斜地に作られた段々畑に決定した.また,地形連鎖を考慮するような比較的面積の広い地域として,研究室で各種データの蓄積のある滋賀県今津町を対象地とした.愛知県の現場の測量を行うとともに,気象観測機器や土壌水分計,地温計,テンショメータを設置し,観測を開始した.今年度は,土壌水分採取器の導入が遅れ,基肥の時期を逸してしまったため,土壌水の採取は行わず,平成20年度以降に行うこととした. 計算モデルに関して,畑地土壌内の水・熱・窒素の動態を数値計算する一次元のシミュレーションモデルを作成し,文献に記載されている土壌パラメータや反応係数を用いて耕作期間を通したシミュレーションが可能となった.その成果を平成19年度農業農村工学会応用水理研究部会研究発表会にて発表した.農地群において地下水環境に悪影響を与えないような農地を選定するシミュレーション最適化モデル(定常モデル)を作成し,Journal of Rainwater Catchment Systemsに公表した。また,過去の気象データを用いて,硝酸態窒素の溶脱を抑制し,かつ作物が貧栄養状態に陥らないことを目的とした統計的に合理的な施肥計画を策定するシミュレーション最適化モデルに関して,平成19年度農地・水資源研究部会において講演を行った. 一方,開発したシミュレーションモデルを現場に適用する際には,対象地の各種パラメータを同定する必要がある.土壌の不飽和透水特性に関して,特殊で高価な機器を必要とせず,土壌水分計とテンショメータから得られた観測データを用いた簡便な同定手法を提案し,第15回日本雨水資源化システム学会で発表するとともにJournal of Rainwater Catchment Systemsに公表した.
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