2008 Fiscal Year Annual Research Report
飼料性メチル基供与体がウシ胚の発生とエピジェネティクスにおよぼす影響
Project/Area Number |
19780209
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 俊太郎 Kyoto University, 農学研究科, 助教 (50447893)
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Keywords | ウシ / 着床前胚 / 飼料性メチル基供与体 / エピジェネティク / メチル化 |
Research Abstract |
ほ乳類着床前胚の発生・分化における遺伝子発現の制御には、DNAやヒストンのメチル化反応がエピジェネティックな機構として関わっており、それらのメチル化修飾を行う酵素にとっての普遍的なメチル基源はS-アデノシルメチオニンである。S-アデノシルメチオニンはメチオニンの代謝によって作られ、その生成経路には葉酸・コリン等の栄養因子(飼料性メチル基供与体)の代謝が含まれる。本年度は、メチオニンの代謝産物であるホモシステインがウシ着床前胚の発生およびDNAのメチル化におよぼす影響を検討した。体外受精によって得られたウシ1細胞期胚を、ホモシステイン(100μM)を添加した培地中で受精後8日目まで培養した(無添加区を対照とした)。胚盤胞への発生率を検討するとともに、得られた胚盤胞のゲノムDNAを抽出し、バイサルファイトシークエンスを用いてサテライトI領域の一部のCpGのメチル化を検討した。その結果、ホモシステインの添加によって、受精後7日目の胚盤胞発生率が有意に低下した。8日目の胚盤胞発生率には差が無かったことから、ホモシステインはウシ胚の着床前発生を遅らせることが示された。さらに、ホモシステインの添加によって、得られた胚盤胞のサテライトI領域のCpGメチル化が有意に低下した。これらの結果から、飼料性メチル基供与体の代謝産物が、ウシ胚の着床前発生に影響をおよぼすこと、さらにその影響は、DNAのメチル化というエピジェネティクス機構への作用を伴うことが明らかにされた。
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