2007 Fiscal Year Annual Research Report
ドナー細胞の性質がクローン胚由来胚性幹細胞に与える影響について
Project/Area Number |
19780213
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水谷 英二 The Institute of Physical and Chemical Research, ゲノム・リプログラミング研究チーム, 研究員 (80443034)
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Keywords | 核移植 / 胚性幹細胞 / 初期化 / 加齢 / 生殖細胞 / 繁殖 / クローン |
Research Abstract |
本年度は高齢個体由来ntES細胞の樹立およびこれを用いた高齢個体からの産仔作出を試みた。 具体的には、2年9カ月齢BCF1(B6xC3H)オス2匹、2年1カ月齢BDF1(B6xDBA2)メス1匹および2年齢BDF1オス2匹の尾から線維芽細胞を採取して核移植を行い、ntES細胞樹立率を検討した。またES細胞マーカーであるOct4およびNanogの免疫染色、および未分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ染色により樹立した細胞の正常性の検討を行った。さらにntES細胞の核移植およびキメラマウス作出による高齢個体由来産仔作出を行った。 体細胞の直接核移植によるクローン個体作出に成功したのは5個体中1匹のみであったが、ntES細胞は5個体すべてから樹立することに成功した。樹立率は10〜25%であり、以前に報告された若い個体からの樹立率と同等のものであった。これらのntES細胞はすべてES細胞マーカーおよび未分化マーカーに陽性であった。これらの結果から、高齢個体の体細胞でも卵細胞質内で正常に初期化され、ntES細胞が樹立可能であること、高齢個体由来のntES細胞はES細胞と同様の性質をもつことが明らかとなった。 次に樹立したntES細胞をドナー細胞として核移植を行い、高齢個体のクローンマウス作出を試みた。その結果、2年9カ月齢という非常に高齢なマウスからクローンマウスを作出することに成功した。またキメラマウスの交配により5個体すべての高齢個体由来の子孫を得ることができたことから、高齢個体由来のntES細胞は生殖細胞へも分化可能であることが示された。これらの結果から、年齢などのドナー個体の状態にかかわらずntES細胞を樹立することで全遺伝子の保存及び子孫作出が可能であり、本研究で用いた技術は不妊動物の増殖方法としても有効な手段となり得ることが示唆される。
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