2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19780214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
恒川 直樹 The University of Tokyo, 大学院・農学部・生命科学研究科, 助教 (50431838)
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Keywords | ニワトリ / 生殖幹細胞 |
Research Abstract |
これまでのところ、複数の研究機関において、マウスの生殖幹細胞が同定されている。生殖幹細胞のファウンダーとなる細胞は、特定の時期に限られると推察されていることから、ニワトリ生殖幹細胞の候補となる細胞の分布様式を免疫組織化学的手法により詳細に調べた。先ず、生殖細胞を特異的に標識する抗ニワトリVasaホモログ抗体を用いた。本抗体は、本研究課題の遂行に先立って調整済みであり、体細胞への免疫反応が一切認められないことをこれまでに示している(Tsunekawa et al.,1999 Development)。個体発生過程の様々なステージ、具体的には性分化後の孵卵6日胚から初生雛までの雌雄生殖腺を主な材料とした。常法に従ってブアン固定の後、パラフィン切片を作成して免疫染色を施し、光学顕微鏡ならびに蛍光顕微鏡を用いて観察を行った。生殖幹細胞として機能すると考えられるのは、雄個体では精祖細胞、雌個体では卵祖細胞であることから、平成19年度ではそれらの生殖腺組織内における分布情報を得ることができ、生殖幹細胞の単離に適した時期と部位を絞り込むことができた。雄では、生殖腺の外に位置する生殖細胞が、孵卵6日胚から初生雛まで観察された。これらの細胞は、アポトーシスで死滅するという定説とは異なる新たな結果が得られた。雌においても同様、生殖腺の外部に生殖細胞が観察されるが、その存在場所は雄とはやや異なる。雌の生殖腺は、右側が優位に発達し、最終的に右側生殖腺だけが機能する。生殖腺の発達に伴い、生殖細胞は位置的な差異を生じていることを見いだした。卵巣皮質に存在する生殖細胞は、連続切片で観察する限りすべて卵母細胞に分化していると考えられたが、髄質側に存在する生殖細胞は、卵祖細胞の状態を維持し、その細胞が初生雛においても観察された。初生雛では、卵巣内のすべての細胞が卵母細胞に分化しているという定説に反する結果となり、こちらにおいても新たな知見を得た。続いて、生体の卵巣での検出を試みたところ、初生雛の卵祖細胞に類似した細胞の特定ができた。今回新たに同定された異所的な精祖細胞や髄質内卵祖細胞は、生殖幹細胞の候補として考えられた。これらの成果を元に、様々な発生ステージの生殖腺を材料にして、生殖細胞の培養を試みた。摘出された雌雄生殖腺組織をコラゲナーゼならびにトリプシンによって酵素処理を施し、解離された細胞を対象にして、胚性幹細胞や生殖管細胞の樹立に用いられる一般的な培地にニワトリ血清を加えて行われた。その結果、初代培養は可能であり、盛んに増殖する生殖細胞を確認することができた。長期培養に適した基本培地や添加物などのさらなる比較検討が必要と考えられた。
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