2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19780216
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大串 素雅子 The Institute of Physical and Chemical Research, 哺乳類生殖細胞研究チーム, 研究員 (50437505)
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Keywords | 核小体 / 卵母細胞 / 受精 / 初期発生 |
Research Abstract |
発生能力を備えた正常な胚の形成には欠かすことができない細胞構造や細胞分子があり、卵母細胞と精子はそれらを相補的に備えている。哺乳類の卵母細胞の核小体は、卵母細胞が発育する間はrRNAの転写およびリボソームの合成に関与している。しかし、発育を完了すると卵母細胞は転写をグローバルに抑制し、核小体はrRNA転写能を失う。この卵母細胞の核小体の機能に関してはいままでどの動物種でも報告がほとんどなかった。申請者の以前の研究から、ブタ卵母細胞において核小体が例外なく母親に由来しており、この核小体は卵母細胞の成熟には必要ないが、受精後または単為発生後の前核中の核小体の形成には必要であることを明らかにしていた。 当年度は,上記の実験結果が哺乳類に共通した事象か否かをマウス卵母細胞で確認し、その後の胚発生にも必須であることを示した。さらに体細胞核移植によって作出される胚では、核小体が卵母細胞由来であり、母方由来の核小体が正常な胚発生に寄与していることを明らかにした。また、卵母細胞の核小体がどの段階で機能することが正常な胚発生に重要なのかを調べるために核小体のない卵母細胞を作出し、卵母細胞の成熟前、成熟後に核小体を再注入しそれらの卵が正常に発生するかを検討した。成熟前、成熟後に核小体を再注入した卵は正常に発生し産仔になったことから卵母細胞の核小体は成熟進行過程には全く必要ないことが確認された。 以上の結果より、哺乳類の受精卵の核小体は卵子によってのみ供給されるという歴史的に重要な知見を得た。卵母細胞の核小体が、全能性を持つ受精卵の構築、初期胚発生に重要であり、卵母細胞の核小体が体細胞の核小体では代替できないことから、卵母細胞特異的な核小体の機能の存在が示唆された。
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