2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規ペプチドグレリンの腎臓における機能的意義-糖尿病モデルを用いた解析-
Project/Area Number |
19780218
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
矢吹 映 Kagoshima University, 農学部, 准教授 (10315400)
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Keywords | グレリン / 糖尿病 / 腎臓 / 糖尿病性腎症 / KK-A^y / 免疫組織化学 / RT-PCR / モデルマウス |
Research Abstract |
【目的】グレリンはラットおよびヒトの胃から発見された新規のペプチドホルモンであり,成長ホルモン分泌促進,摂食亢進,心血管保護など多彩な機能を有する。我々は胃以外の器官として腎臓にもグレリンが発現することを近年報告したがその機能的意義は明らかでない。本研究の目的は,糖尿病モデルマウスを用いた解析により腎臓におけるグレリンの機能的意義を明らかにすることである。平成19年度はモデルマウスにおける糖尿病性腎症の病態と腎臓におけるグレリンの発現動態を明らかにした。 【方法】2型糖尿病モデルであるKK-A^y/TaJclマウスと健常対照であるC57BL/6NJclマウスをともに8,12,16,20週齢で検索した(各群5例)。採取した血液,腎臓について形態学的および生化学的検索を行った。 【結果】血液生化学では,血漿クレアチニン濃度など腎機能マーカーに明らかな変化は認められなかったが,光顕および電顕的にはKKマウスにのみ典型的な糖尿病性腎症が認められた。糸球体にはメサンギウム基質の増加や結節性変化が,尿細管には萎縮や硝子変性が観察され,週齢を追うごとに病態は重度になっていった。免疫組織化学的にはグレリンの発現がKK,C57BL/6ともに遠位尿細管上皮に観察された。その局在や免疫反応は糖尿病性腎症の進行に関わらず明らかな変化を示さなかった。腎臓におけるグレリン前駆体mRNAの発現をRT-PCRで検索したところ,KK,C57BL/6とも8から20週齢まで明らかな変化を示さなかった。 【考察】平成19年度の検索により,腎臓におけるグレリンの発現は糖尿病性腎症の進行に関わらず安定していることが明らかとなった。このことから,グレリンは多少の腎機能低下には左右されない恒常的な機能を腎臓で担っていることが示唆された。平成20年度には,グレリンの腎機能保護効果を明らかにするためにKKマウスの糖尿病性腎症に対するグレリン投与の影響を検索する予定である。
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