2007 Fiscal Year Annual Research Report
潜在性乳房炎罹患牛におけるウシ組換えサイトカイン乳房内投与の治療効果
Project/Area Number |
19780236
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
菊 佳男 National Agricultural Research Organization, 動物衛生研究所・生産病研究チーム, 研究員 (70370179)
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Keywords | 獣医学 / ウシ / 潜在性浮房炎 / Drug Delivery System / GM-GSF / CD14 / T細胞 |
Research Abstract |
牛の乳房炎は酪農経営を脅かす最大の病気であり、年間被害額は約800億円と概算されている。抗生物質中心の治療が行われているが、原因菌の乳腺組織への定着性が早く慢性化しやすいため、治癒率は極めて低い。また、過剰な治療による薬剤耐性菌の出現や薬剤残留の問題も「食の安全性」の観点から問題となっている。これらのことから抗生物質の使用を避けようとする世界的な動きが強まっており、抗生物質の低減化に繋がる次世代治療技術の開発が心待ちにされている。 本研究において、潜在性乳房炎罹患牛に対するDrug Delivery System(DDS)リポソーム包埋組換えウシ(rb)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)乳房内投与による治療効果ならびに生体防御機構へ及ぼす影響を免疫学的に評価し、その作用を検討した。 潜在性乳房炎に罹患している泌乳中期のホルスタイン牛を供試し、罹患乳房内にリポソーム包埋rbGM-CSF(LGM)を投与した。臨床症状、血液及び乳汁一般検査ならびに血液及び乳汁単核球サブポピュレーション解析を実施した。 乳汁検査の結果、LGM投与7日目以降にCMT値及び総菌数は低下した。末梢血単核球サブポピュレーションの変動は、投与後3日にCD3+及びCD8+細胞率が上昇し、投与後7日にCD21+細胞率が上昇した。乳汁単核球サブポピュレーションの変動は、投与後1日にCD14+細胞率が上昇し、投与後2日からCD4+及びCD8+細胞率が上昇した。 以上のことから、乳房炎罹患乳房内へのLGM投与は潜在性乳房炎の治療効果を有することが示された。そのメカニズムは、LGMが罹患乳房内においてマクロファージ(CD14+細胞)を誘導し、その後、T細胞(CD4+およびCD8+細胞)を動員する生体防御機構が働いたためと考えられた。
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