2008 Fiscal Year Annual Research Report
潜在性乳房炎罹患牛におけるウシ組換えサイトカイン乳房内投与の治療効果
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19780236
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
菊 佳男 National Agricultural Research Organization, 動物衛生研究所・生産病研究チーム, 主任研究員 (70370179)
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Keywords | 獣医学 / ウシ / 潜在性乳房炎 / Drug Delivery System / IL-8 / A / G比 / 単核球表面抗原 |
Research Abstract |
牛の乳房炎は酪農経営を脅かす最大の病気であり、年間被害額は約800億円と概算されている。抗生物質中心の治療が行われているが、原因菌の乳腺組織への定着性が早く慢性化しやすいため、治癒率は極めて低い。また、過剰な治療による薬剤耐性菌の出現や薬剤残留の問題も「食の安全性」の観点から問題となっている。これらのことから抗生物質の使用を避けようとする世界的な動きが強まっており、抗生物質の低減化に繋がる次世代治療技術の開発が心待ちにされている。本研究において、潜在性乳房炎罹患牛に対するDrug Delivery System(DDS)リポソーム包埋組換えウシ(rb)インターロイキン8(IL-8)乳房内投与による治療効果ならびに生体防御機構へ及ぼす影響を免疫学的に評価し、その作用を検討した。 潜在性乳房炎に罹患している泌乳中期のホルスタイン牛9頭を供試し、罹患乳房内にリポソーム包埋rbIL-8(LIL)を投与した。LIL投与により、3頭が治癒し(治癒群)、6頭が治癒に至らなかった(非治癒群)。治癒群は非治癒群に比べLIL投与前において、体細胞数及び乳汁化学発光(CL)能が低く、A/G比が高かった。一方、血液単核球表面抗原においては、二群間の差はなく、またLIL投与の影響もなかったが、乳汁単核球表面抗原においては、二群間に差はないものの、両群ともにLIL投与後6時間から1日でCD3の発現が低下し、投与後2日から3日でWC1の発現が上昇した。 これらのことから、A/G比が高くかつ体細胞数及び乳汁CL能が低い急性期で軽度と考えられる乳房炎に対して、LILの治療効果は高いことが考えられた。またLIL乳房内投与は、治癒効果とは関連性は示されなかったが、乳汁中の単核球の細胞構成比に影響を与えることが明らかになった。
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