2009 Fiscal Year Annual Research Report
潜在性乳房炎罹患牛におけるウシ組換えサイトカイン乳房内投与の治療効果
Project/Area Number |
19780236
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
菊 佳男 National Agricultural Research Organization, 動物衛生研究所生産病研究チーム, 主任研究員 (70370179)
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Keywords | 獣医学 / ウシ / 潜在性乳房炎 / 免疫機能 / GM-CSF / IL-8 / 単核球構成 |
Research Abstract |
酪農経営を脅かす最大の疾病である乳房炎の治療には、主に抗生物質が使用されているが、薬剤耐性菌出現の危険性から、これに替わる次世代の治療薬の開発が広く求められている。これまでに、体細胞数は高いが臨床症状を示さない潜在性乳房炎罹患牛に対して、サイトカインを罹患乳房内に投与することによって、体細胞数を低減させることを確認してきた。その治癒メカニズムを明らかにするため、平成19年度ならびに20年度において、組換えウシ顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rbGM-CSF)およびインターロイキン8(rbIL-8)を難治性の黄色ブドウ球菌(SA)性の潜在性乳房炎罹患牛に投与し、乳房内免疫細胞の動態とその治療効果について解析した。平成21年度においては、rbGM-CSFおよびrbIL-8を同じくSA性潜在性乳房炎罹患乳房内に併用投与し、その効果を検証した。また、平成19年度ならびに20年度に実施した各サイトカインの乳房内単独投与試験と平成21年度の併用投与試験の結果を比較解析し、潜在性乳房炎に対して治療効果の高い投与方法について検討した。 乳房炎簡易診断法であるCMTスコアを用いて治療効果を調査したところ、併用投与法は単独投与法の効果と大きな違いは無かった。これらの中で、サイトカイン投与前に比較し最もCMTスコアが減少した投与法は、有意では無いもののrbGM-CSF単独投与であった。また、乳汁中の貪食細胞活性はいずれの投与法においても同様に上昇していたが、乳汁中単核球の構成は、rbGM-CSFのみにおいて投与後CDI4+ならびにCD4+細胞率の上昇がみられた。 以上のことから、SA潜在性乳房炎に対するこれらのサイトカイン投与は、rbGM-CSF単独が最も治療効果が高い可能性があり、その機序は乳汁中白血球の貪食機能ならびに細胞性免疫機能を亢進させるためと考えられた。
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