Research Abstract |
水田を含む農耕地では,農薬補助剤として使用されている非イオン系界面活性剤アルキルフェノールポリエトキシレート(APEO)が微生物分解され,外因性内分泌かく乱作用を有するアルキルフェノール(AP)類が生成されている,よって現在,農耕地を起源とする水循環系および農作物の安全性を確保する上で,環境負荷の少ない微生物機能を利用した残留性AP類の無毒化技術の開発が期待されている.しかし,微生物によるAPEO分解機構は解明されていない.そこで本研究では,既に分離されたAPEOの一種であるオクチルフェノールポリエトキシレート(OPEO)不完全分解菌Pseudomonas putidaS-5のOPEO分解酵素遺伝子をトランスポゾン(Tn)タギング法で単離し,その遺伝子産物の機能と構造を明らかにしてAPEO分解機構を解明することを目的とする.これまでの研究で,P.putidaS-5から作成した約11,000株のTn挿入変異株の中からOPEO分解遺伝子破壊株17株を選択した.平成21年度までに,それら17株全ての遺伝子の塩基配列を解析した.はじめに,17株のOPEO分解遺伝子破壊株の染色体DNAからプラスミドレスキュー法で取得したTn挿入部位周辺のDNA断片を用いて,Tn挿入で破壊されたOPEO分解遺伝子の塩基配列を決定した.相同性検索により,それらがアシルCoAシンテターゼ,シャペロンタンパク質,NADHキノン酸化還元酵素,グリコシルトランスフェラーゼ,転写因子等と相同性を示すことを見出した.しかし,これらの遺伝子産物の中で直接的にOPEO分解に関与するものは見いだせなかった.また,17株の中から9株のOPEO分解遺伝子の発現解析をRT-PCRにより行った.RT-PCRには,OPEOまたはグルコースを炭素源とした最少培地で培養したP.putidaS-5のトータルRNAを用いた.RT-PCRの結果,9遺伝子の中で,1つの遺伝子のみがOPEOが炭素源のときのみ発現され,残り8つは炭素源の違いに関係なく発現されることを明らかにした.これより,OPEO分解に関与する遺伝子の多くは,構成的に発現されることが明らかにされた.
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