2008 Fiscal Year Annual Research Report
植物からのモノハロメタン放出の環境応答性と生理学的意義の解明
Project/Area Number |
19780249
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中村 達夫 Yokohama National University, 大学院・環境情報研究院, 講師 (50334636)
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Keywords | 代謝 / 病害抵抗性 |
Research Abstract |
モノハロメタン放出に関わる遺伝子として、シロイヌナズナよりHOL遺伝子(本研究ではAtHOL1と呼ぶ)が同定されている。昨年度までに、1) AtHOL1相同遺伝子が植物界に広く存在すること、2) シロイヌナズナにはAtHOL1の相同遺伝子としてAtHoL2とAtHoL3遺伝子が存在すること、3)この3遺伝子がコードするタンパク質がS-アデノシルメチオニン依存性メチル基転移酵素活性を有すること、4) AtHOL1タンパク質がチオシアン酸イオンに対するメチル化活性が高いこと、5) AtHOL1遺伝子破壊シロイヌナズナがチオシアン酸イオンに高い感受性を示すこと、を明らかにし、生体内においてAtHOL 1がチオシアン酸イオンの代謝に関わる可能性を示している。チオシアン酸イオンは、ある種のグルコシノレート(インドールグルコシノレート等)の加水分解により生成することが、これまでにin vitro系において明らかにされている。本年度は、シロイヌナズナにおけるチオシアン酸イオンの生成が、組織の傷害およびミロシナーゼに依存することを明らかにした。また、シロイヌナズナにおいて生成したチオシアン酸イオンは、AtHOL1依存的にメチル化されチオシアン酸メチルへ代謝されることを示した。チオシアン酸イオンのメチル化によるチオシアン酸メチルへの変換は、いくつかの植物病原細菌や非病原細菌に対する生育阻害活性を高めることを明らかにした。AtHOL1破壊シロイヌナズナの幼苗は野生型シロイヌナズナと比較して、ある植物病原細菌に対する抵抗性が低下したことから、AtHOL1はシロイヌナズナにおいて病害抵抗性に関与する可能性が示された。モノハロメタン放出に関わるとして同定されたAtHOL1遺伝子は、シロイヌナズナにおいては病害抵抗性に関与し、モノハロメタン放出はチオシアン酸イオン代謝の副産物である可能性が示唆された。
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