2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規光学活性イオン性液体の開発とそれを反応場とした触媒的不斉反応システムの構築
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19790002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 望 Hokkaido University, 大学院・薬学研究院, 准教授 (80349258)
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Keywords | イオン性液体 / 不斉反応場 / 触媒リサイクル / 環境調和型反応 / グリーンケミストリー / ルテニウム / 環化反応 / 環化二量化 |
Research Abstract |
イオン性液体(Ionic Liquid=IL)は、一般に高極性で蒸気圧が測定不能なほど低いため大気拡散性が殆ど無く、また水や有機溶媒と混合し難いため「次世代の溶媒」として様々な有機合成反応の反応媒体として利用されつつある。本研究課題は、反応溶媒としてのILの持つ反応加速効果などの特異な性質と回収、再利用が出来る点に着目し、再利用可能な光学活性イオン性液体を用いた新たな触媒的不斉合成反応システムを構築することを目的としている。当該年度はまず、その不斉反応場の当たり不斉誘起能評価のためのベンチマーク反応となるルテニウム触媒による環化反応の検討を進めた。すなわち、分子内にアレンとアルキンを持つ基質に対し、エチレン気流下でルテニウム錯体としてCp^*RuCl(cod)を用いて種々検討を行った。5,5-bis(methoxylcarbonyl)octa-1,2-dien-7-yneを基質としてエチレン気流下でルテニウム錯体と反応させたところ、エチレン挿入が進行した化合物の収率はわずか6%であった。そこで多重結合上の置換基を検討していたところ、アレン上にtert-ブチル基、アルキン上にメチル基を持つ5,5-bis(methoxycarbony1)-10,10-dimethylundeca-7,8-dien-2-yneを基質として同条件下で反応させたところ、興味深いことに基質の二量化が進行した化合物が93%の収率で生成した。機器スペクトルデータを詳細に検討したところ、生成物は2つの5員環と3つの4員環が縮環したような階段状の構造を有していることが明らかとなった。アルキン上にフェニル基を持つアレン-インを用いた場合でも本反応は速やかに収率で進行し、極めて高い収率で環化二量化生成物を与えた。なおこの化合物のX線結晶構造解析によって立体化学を決定した。このような形式の反応はこれまで全く知られておらず、本研究成果はルテニウム触媒反応の化学に新たな知見を与えるものと考えられる。現在、不斉反応への展開を目指し検討を続けている。
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Research Products
(17 results)