2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属アート型塩基の持つ反応選択性の起源の解明と機能性芳香族構築化学への展開
Project/Area Number |
19790003
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中 寛史 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 助教 (70431517)
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Keywords | 有機反応学 / 金属錯体化学 |
Research Abstract |
平成21年度は前年度で得られた知見をふまえ、実際に分子触媒を設計することで有機金属試薬の持つ反応選択性の制御を試みました。その結果、フォスファゼン塩基触媒を用いる位置および官能基選択的な有機亜鉛試薬の求核置換反応を見いだしました(Chem. Eur.J. 2009, 15, 9805-9809.)。塩基試薬であるフォスファゼン塩基をルイス酸である有機亜鉛試薬と組み合わせることで、その塩基性は抑えたまま求核性のみを向上させた反応系を開発できた点は特徴的です。従ってこの概念に基づき、フォスファゼン塩基触媒を用いたヨウ素-亜鉛交換反応による芳香族亜鉛化合物の効率的合成法を開発しました。この反応は穏和な条件下で多様な官能基を損なうことなく、複雑な多置換芳香族化合物や非対称縮環型芳香族化合物を精密に合成できる有用な手法です(New, J. Chem. 2010,掲載決定)。また前年度までに得られた理論化学的な知見をふまえ、有機分子への位置および官能基選択的なヘテロ原子直接導入反応の開発を試みたところ、コバルト触媒を用いた末端アセチレン化合物の官能基選択的な水和反応を見いだしました(論文投稿準備中)。本反応は官能基を有するメチルケトン化合物の新しい効率的合成法になりうると期待できます。以上の成果は理論と実験による反応選択性についての研究から、実用的な合成反応開発へと展開した点で学術的な重要性が高いと考えられます。
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