2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 昇太 Osaka University, 微生物病研究所, 特任助教 (90432434)
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Keywords | 酵素 / 蛋白質 / 分子動力学 / X線結晶構造解析 / 補酵素 / 反応機構 / ステロイド / 酸化還元反応 |
Research Abstract |
3αヒドロキシステロイド脱水素酵素の反応機構を明らかにするために、これまで分子動力学計算(MD)によって、この酵素の補酵素NADHの非結合状態における基質結合ループ部分の特徴的な構造変化を捉えた。MDシミュレーションの観察からこの構造変化に重要だと考えられるアミノ酸T75,T188,L190を推定し、それらのアラニン変異解析を行ったところ、T188A変異体はNADH結合によるヘリックス誘起能がなく、補酵素結合の負の協同性を失っていることが明らかになった。本年度はさらにこのT188A変異体の触媒活性の解析を行い、T188の重要性を調べた。その結果、T188A変異体のコール酸の酸化触媒活性は、野生型に比べ1/5の触媒活性になっていた。次にT188A変異体のジヒドロコール酸の還元触媒活性を調べたところ、野生型の1/190の活性まで落ちていた。このように酸化反応よりも還元反応にT188Aの変異は大きく影響を与えた。おそらくNADHの結合後に起こるヘリックスへの構造変化はT188がトリガーとなって引き起こされ、それが還元反応にとって重要な役割を果たしていることが示唆された。このような局所的なループからヘリックスの構造変化が酵素の触媒活性に影響するのは稀有な例であり、1変異によってその構造変化を失ったT188A変異体を見出した意義は非常に大きい。今後は基質選択性や立体反応の選択性にこのT188がどのように影響するのか、またT188A変異体の構造解析によって反応機構の詳細について検討していきたい。この酵素は血中の胆汁酸濃度測定に使用されており、このような応用性の高い酵素の反応機構の解明は、今後の酸化還元酵素の設計等、酵素の蛋白質工学にとって重要な知見になることが期待される。
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