2007 Fiscal Year Annual Research Report
医療機器の適正使用に関する研究-可塑剤溶出の制御-
Project/Area Number |
19790040
|
Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
伊藤 里恵 Hoshi University, 薬学部, 助手 (90398892)
|
Keywords | 医療機器 / 代替可塑剤 / リスク評価 |
Research Abstract |
ポリ塩化ビニル(PVC)製医療機器に使用される可塑剤トリメリット酸トリス-2-エチルヘキシル(TOTM)の安定性及び溶出挙動を検討した。まず、TOTM標準溶液に紫外線及びガンマ線を照射し、安定性を確認した。液体クロマトグラフィー紫外可視吸光度検出器(LC-UV)を用いて測定した結果、分解物らしきピークは観察されなかった。さらに、LC-飛行時間型質量分析計(TOF-MS)で測定した結果、TOTMのエステル結合が切れた同一質量数である三化合物(トリメリット酸ジ-2-エチルヘキシル(DOTM))が分解物の候補として考えられた。半経験的分子軌道法(MOPAC)による構造最適化を行い、最も生成エネルギーの低い化合物が分解物候補として示唆された。LC-タンデム質量分析法(MS/MS)においても同様のイオンを有する物質がピークとして確認されている。 一方、PVC/TOTMシートに紫外線及びガンマ線を照射し、溶出挙動を確認したところ、LC-UV、 LC-TOF-MSの分析におけるTOTM溶出量は、照射時間依存的に減少していくことが明らかとなったが、分解物のピークは検出されなかった。LC-MS/MS法においても、ネガティブイオン、ポジティブイオンともに分解物のピークは観察されなかった。ところで、TOTMの溶出量は広く利用されている可塑剤であるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)の溶出量よりも非常に低濃度であった。さらにTOTMの毒性はDEHPの毒性よりも低いと考えられており、毒性と溶出量の観点から、TOTMの可塑剤としての有用性が確認できた。さらに実際の輸液チューブにシリンジポンプで薬剤を送液し、実際の医療行為における患者暴露量を算出した。免疫抑制剤であるPrograf(タクロリムス水和物)を用いた結果、TOTM溶出量はDEHPと比較して、400分の1の溶出量であった。
|
Research Products
(11 results)