2009 Fiscal Year Annual Research Report
医療機器の適正使用に関する研究―可塑剤溶出の制御―
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19790040
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
伊藤 里恵 Hoshi University, 薬学部, 助教 (90398892)
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Keywords | 医療機器 / 代替可塑剤 / 暴露量評価 |
Research Abstract |
本年度はPVC材質のガンマ線滅菌による劣化評価を通して、PVC製医療機器の可塑剤溶出に関するリスク評価と医療行為におけるTOTM暴露量の推量を行った。昨年度までの研究により、TOTMの溶出量がDEHPの溶出量と比較して非常に低濃度であることが分かっており、PVC材質の劣化評価をした際に材質変化によるTOTM溶出量の変化が観察できないことが危惧された。そこで、この材質劣化評価は、PVC/DEHP材質を用いてナノインデンデーション法により表面硬さと弾性率を確認した。ナノインデンター測定において、PVC表面の粗さから得られたデータのバラツキが非常に大きかったため、測定数を増やして平均的な挙動を求めた。その結果、未滅菌PVCシートと比較して、表面から深さ10μm以下の表層近くでPVCシートの硬さが増加しており、深さ20μmの結果では顕著な差が確認できないことから、この硬さ変化は表面に特有のものであると推察された。さらに、この際のDEHP溶出量はガンマ線吸収線量に依存して減少しており、分解物は線量依存的に増加していた。しかし、その溶出量変化とPVC表面の硬さや弾性率の変化には定量的な関係は観察されなかった。 一方、H19年度の研究でTOTMの標準液にガンマ線を照射した際に、分解物の候補として挙げられたトリメリット酸ジ-2-エチルヘキシルは、PVC/TOTMシートからは溶出が確認されなかった(検出限界以下)。輸液チューブにシリンジポンプで薬剤を送液し、暴露量の算出を行った。検討した薬剤の中で最もTOTMを溶出させたプログラフ(R)を例として算出すると(体重50kgのヒトが3mのチューブを使用したと仮定)、一日あたりのヒトへの暴露量は0.12μg/kg/dayであった。 以上のことから、ガンマ線照射滅菌をした際にもTOTMは医療機器の可塑剤として有用性が高いことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)