2007 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児期の海馬における新生顆粒細胞の移動機構とその破綻による海馬発達異常の解明
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19790048
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 隆太 The University of Tokyo, 大学院・薬学研究科, 助教 (90431890)
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Keywords | 海馬顆粒細胞 / 細胞移動 / GABA / てんかん / 熱性けいれん / 乳幼児 / 神経回路 / 培養切片 |
Research Abstract |
本研究の目的は、大きく分けて以下の二つである。すなわち、(1)乳幼児期の海馬における新生顆粒細胞の移動機構を解明すること及び、(2)側頭葉てんかん患者の海馬で頻繁に観察される異所性顆粒細胞の出現機構を解明すること、である。研究代表者は、特に神経伝達物質であるGABAの関与に着目し、海馬培養切片及び個体動物を用いた実験をおこなった。まず、GFP強制発現ラット由来の歯状回門切片と野生型ラット由来の海馬切片を共培養することにより、放射状移動中の幼若顆粒細胞がGABA_A受容体を介した興奮性入力を受けていることを電気生理学的手法によって明らかにした。また、側頭葉てんかん患者が乳幼児期に高頻度で経験する熱性けいれんの実験モデルラットより歯状回門切片を摘出して共培養したところ、同切片由来の細胞が歯状回門中で逆走する様子が頻繁に観察され、この現象はGABA_A受容体阻害薬によって阻止された。さらに同モデルラットの海馬における異所性顆粒細胞の出現は、GABA_A受容体阻害薬の投与によって抑制された。以上の結果は、顆粒細胞の移動をGABAが調節することを初めて示すとともに、熱性けいれんを経験した海馬ではGABAの入力によって顆粒細胞が逆走し、将来的に異所性顆粒細胞となる可能性を示唆した。以上の結果は、GABA入力の制御による異所性顆粒細胞の出現の防止が、新たな側頭葉てんかんの治療法開発に繋がる可能性を含み、基礎医学的にも意義深い。これらの結果の一部は第37回北米神経科学会年会で研究発表し、2007年度 日本神経科学学会「トラベルアワード」を受賞した。 また、研究代表者は、成体海馬に存在する顆粒細胞の大部分が乳幼児期に新生した細胞であること及び、乳幼児期のてんかん発作が成体期の異所性顆粒細胞出現に繋がることを、マウスに新生細胞マーカーであるBrdUを投与することによって示し、2報の論文に纏めた。
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