2008 Fiscal Year Annual Research Report
乳幼児期の海馬における新生顆粒細胞の移動機構とその破綻による海馬発達異常の解明
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19790048
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 隆太 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (90431890)
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Keywords | 海馬顆粒細胞 / 細胞移動 / GABA / てんかん / 熱性けいれん / 乳幼児 / 神経回路 / 培養切片 |
Research Abstract |
平成20年度は、熱性けいれんによって異所性顆粒細胞が生じるメカニズムを、in vitro及びin vivoの両実験系を利用して詳細に解析した。まず、歯状回門切片の移植片培養法を開発し、熱性けいれんラット由来の移植片から移動する細胞では、移動に必要な先導突起の成長円錐上におけるGABA_A受容体の発現量が上昇していることを発見した。さらに、このような先導突起に対してGABA_A受容体の作用薬を局所適用すると、先導突起から細胞体へとカルシウムオシレーションが生じ、細胞の移動が停止、または逆走することを発見した。 次に、生後5日齢のラットに分裂細胞マーカーであるBrdUを投与し、生後11日齢において熱性けいれんを誘導したところ、熱性けいれんを誘導していない群と比較して、生後18日及び生後60日目における異所性顆粒細胞 (BrdUおよび顆粒細胞マーカーProx1共陽性細胞) の密度が上昇することが明らかになった。さらに、熱性けいれんによる異所性顆粒細胞の出現は、けいれん誘導後にGABA_A受容体の阻害薬を処置することで抑制された。また、生後11〜18日目にGABA_A受容体の作用薬を慢性処置することにより、異所性顆粒細胞が出現した。以上の結果は、熱性けいれんによって将来的に異所性顆粒細胞が出現することを初めて示したと同時に、その原因が、先導突起成長円錐上のGABA_A受容体の活性化による新生顆粒細胞の逆走移動であることを解明した点で、細胞生物学的な見地からも意義深い。これらの結果の一部は第42回日本てんかん学会で発表し、優秀発表賞を受賞した。また、現在、本研究を論文として纏め、国際誌に投稿準備中である。
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