Research Abstract |
アトピー性皮膚炎の痒みに関与する内在性プロテアーゼの同定並びにその痒みの発生機序を明らかにすべく, 昨年は, プロテアーゼ活性化受容体(PAR)-2, セリンプロテアーゼの関与, マスト細胞プロテアーゼ(MCP)-6と-7のmRNAの増加,カリクレイン(KLK)5と7の関与を報告した。更に本年は, MCP-6と-7の投与が痒みを誘発することを見出した。これらは, tryptaseに属し, アトピー性皮膚炎マウス皮膚では, その活性の増加と遊離が促進していることから, マスト細胞由来プロテアーゼが痒みに関与することが明らかとなった。アトピー性皮膚炎マウス皮膚では, KLK5タンパクの増加とKLK5を標的阻害プロテアーゼとする内因性阻害因子lympho-epithelial Kazal type inhibitorの発現が減少していることがわかった。このことは, KLK5の皮膚内での活性が維持されることを意味し, KLK5による痒みの持続の原因かもしれない。これまで, PAR-2の痒みの関与を報告したが, KLK5もPAR-2阻害薬で抑制されたことからKLK5の痒みもPAR-2を介している可能性がある。 更に, アトピー性皮膚炎マウス皮膚および同系健常マウス皮膚を用いて, ザイモグラフィー, 二次元電気泳動, 及びTOF-MSを用いたプロテオーム解析を試みた。その中で, いくつかこれまでに痒みへの関与が報告されていないプロテアーゼが見出された。今後, 解析をする予定である。 また, PAR-2を介した痒みの発生機序では, 従来痒みの伝達に関与していると考えられていたが, アトピー性皮膚炎などの難治性掻痒への関与が疑問視されているヒスタミンが活性する一次感覚神経とPAR-2の活性化により興奮する一次感覚神経が異なることを見出した。
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