2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790053
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永井 拓 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 特任講師 (10377426)
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Keywords | 統合失調症 / 二次元電気泳動法 / タンパク質 / リンパ芽球様細胞株 |
Research Abstract |
統合失調症は、罹患率が1%と高く、多くの症例は青年期に発症して以来、長期にわたって学業面でも就労面でも患者の社会的機能を低下させ、加えて10%は自殺既遂に至る。また、現在利用可能な薬物、心理社会的治療を行ったとしても十分な治療効果を得られない症例が2/3に達する。以上の点を鑑み、統合失調症の病態を解明し、病態に即した治療法・予防法を見いだすことは、社会的要請の高い研究課題である。本研究では、統合失調症患者の末梢血液からリンパ芽球様細胞株を樹立し、二次元電気泳動法によりタンパク質の発現変化について解析した。本研究は名古屋大学医学部倫理委員会において承認済みであり、承認内容にしたがって倫理的配慮のもとで遂行した。リンパ芽球様細胞株の樹立に要した目数は正常対照者群で29±2日、統合失調症患者群で34±5日であり、得られた細胞数についても両群間に有意な差は認められなかった。二次元電気泳動によってタンパク質を分離した結果、約900個のスポットが検出された。各群の検出されたスポット数の平均は正常対照者群が905±7個、統合失調症患者群が899±10個であった。さらに、個々のスポットについて解析した結果、15個のスポットに有意な発現変化が認められた。統合失調症患者群において正常対照者群に比べて発現が増加したスポットが8個、逆に発現が減少したスポットが7個検出された。発現変化が認められたスポットのうち統合失調症患者で最も発現が増加したスポットは正常対照者群の約1.9倍であり、最も発現が減少したスポットは正常対照者群の約0.6倍であった。以上の結果から統合失調症患者のリンパ芽球様細胞株において発現が変化するタンパク群が存在し、統合失調症関連分子である可能性が示唆された。今後は発現に差が認められたスポットについてタンパク質を同定するとともに、その機能に関する解析を行う予定である。
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