2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790055
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 篤史 Kyoto University, 薬学研究科, 助教 (70437242)
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Keywords | 神経科学 / 脳 / 情報伝達 / リン酸化 |
Research Abstract |
当該年度においては、研究計画に基づき、前年度に引き続いて野生型と中枢神経系ジャンクトフィリン欠損マウスの脳組織においてリン酸化の程度が異なるタンパク質を同定するための実験を行うとともに、同定された分子のリン酸化状態の変動についてその再現性を確認した。また、同じく前年度の研究により野生型と中枢神経系ジャンクトフィリン欠損マウス脳の間でRNAレベルにおける発現量に差が見られることが明らかになった、神経可塑性調節因子としての機能が示唆されている転写因子Early growth responce-1(Egr-1)、およびEgr-1によって発現誘導されるフィードバック阻害因子であるNab2とよばれる転写抑制因子の2つの分子について、引き続き検討を行った。すなわち、特異抗体を用いた免疫学的手法による組織染色を行い、各分子の脳内における発現分布および発現の増減について、詳細に解析を行った。その結果、Nab2は小脳においては主に顆粒細胞の核内に細胞1つあたり1から6個程度のドットとして分布している像が観察された。このにとは、Nab2が小脳顆粒細胞においてゲノム上の特定の領域に集積していることを示唆する新たな知見である。さらに、ジャンクトフィリンの欠損によってこの分布には変化が見られないものの、一定レベル以上にNab2を発現している細胞核の数が減少することが明らかになった。これらの知見は中枢神経細胞におけるカルシウムシグナル伝達とリン酸化および遺伝子発現をつなぐ新たな可塑性制御機構を解明する糸口となる可能性があり、重要な研究成果であると思われる。
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