2008 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染に伴う宿主細胞膜上分子間相互作用の網羅的変動解析
Project/Area Number |
19790060
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小谷 典弘 Kochi University, 教育研究部・医療学系, 助教 (90342782)
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Keywords | EBウイルス / 細胞膜上分子 / 脂質マイクロドメイン |
Research Abstract |
本研究ではヒト癌ウイルスであるEpstein-Barrウイルス(EBV)感染というイベントに伴って宿主細胞の細胞膜上分子間相互作用がどのような影響を受けるかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、1) 昨年明らかにしたEBVの感染によるThy-1の細胞膜への過剰発現現象を基にThy-1の細胞膜への発現が脂質マイクロドメインを含む宿主細胞膜上分子間相互作用の変化を誘起する可能性、2) EBVの感染によるその他の分子間相互作用への影響について検討した。第一にThy-1が相互作用する細胞表面分子を我々が開発した細胞表面分子間相互作用生化学的可視化法 (biochemical Visualization) を用いて特異的に標識し、抗体アレイにて網羅的同定を試みた。その結果、Receptor Tyrosine kinase抗体アレイ(R&D社製)を使用した解析では、i) MerおよびTie-2受容体がEBV非感染のAkata-細胞よりもEBV感染細胞のAkata細胞でよりThy1と強く相互作用していた、ii)逆にEphB1およびTrkB受容体に関しては、Akata細胞よりもAkata-細胞の方がThy1と強く相互作用する事が明らかになった。また、Immunoreceptor抗体アレイ(R&D社製)を用いて、同様の解析を行なったところ、Thy1とCD5およびTREM-2との相互作用がEBV感染の有無で影響を受けていることが判明した。次に、細胞接着に重要な分子であるbetal integrinと相互作用する分子を同様に解析するとTrkA及びEphB1との相互作用がEBV感染の有無で影響を受けていることが分かった。しかし、同じ条件で細胞膜表面分子ganglioside GM3の相互作用分子を解析した結果、Thy1およびbctal integrinの相互作用解析で見られたEBV感染による相互作用変化は観察されなかった。これらの結果から、EBV感染によって様々な宿主細胞膜上分子間相互作用が変化していることが明らかになった。特に、EBV感染により相互作用が減弱する分子群が存在することが明らかになり、EBVがこの現象を通じて宿主細胞のシグナル伝達系を抑制している可能性が示唆された。
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