2007 Fiscal Year Annual Research Report
血管系疾患の新診断と治療法開発を指向した酸化高密度リポタンパクの病態生化学的研究
Project/Area Number |
19790066
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松永 俊之 Gifu Pharmaceutical University, 薬学部, 講師 (80306274)
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Keywords | リポタンパク質 / 酸化 / 動脈硬化症 / 酸化ストレス |
Research Abstract |
1.炎症性マーカー(CRPおよびSAA)による培養血管内皮細胞への毒性の検討 ヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)をCRPで48時間刺激したところ,100μg/ml以上の高濃度のCRP刺激で細胞毒性が見られ,その毒性は活性酸素産生の亢進を伴うアポトーシスによることが明らかとなった。しかしながら,HAEC毒性が発現したCRP濃度は健常人の基準値よりも20倍以上高く,炎症を除く動脈硬化性疾患患者の検査値ではこのCRP値はほとんど見られないため,生理的条件下でのCRP単独処理はHAEC毒性を示さないと判定した。また,100μg/ml以上の濃度のSAA刺激においてもHAECの生存率の低下は認められなかった。 2.疾患マーカーと酸化リポタンパクの結合性の検討 上記炎症性マーカーのnative HDLおよび銅酸化HDLとの結合性を二次元電気泳動により検討したところ,SAAはnative HDLおよび酸化HDLに結合したが,CRPはどちらとも結合しなかった。それに対し,CRPとnative HDLの混合液を銅酸化した結果,CRP-酸化HDL結合体が検出された。動脈硬化発症時には血中活性酸素量および炎症性マーカー濃度が共に高まることから,両炎症マーカーと酸化HDL結合体は新規動脈硬化マーカーとなりうることが示唆された。 3.動脈硬化症,糖尿病患者血漿中の酸化リポタンパクの検出と構造確認 酸化HDL抗体を固定化したELISA法を用いて,狭心症および糖尿病患者の血漿中の酸化リポタンパク量を検出したところ,両疾患患者血中の酸化リポタンパク量は健常人の約2倍であった。また,それらの血漿からHDL画分を単離してHAEC毒性を調べた結果,細胞生存率の低下や活性酸素産生亢進はほとんど認められなかった。さらに,両患者の構造変化を調査したところ,タンパク質のクロスリンク(SDS-PAGE,Western分析)や脂質過酸化(TBARS測定,LC/MS分析)において健常人と顕著な差異は認められなかった。
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