2009 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス適応の形成ならびに破綻機構における5-HT_7受容体の機能的役割の解明
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19790069
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
辻 稔 International University of Health and Welfare, 薬学部, 准教授 (70297307)
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Keywords | ストレス / 滴応 / セロトニン(5-HT) / 5-HT_7受容体 / ERK / マウス / ストレス性精神疾患 |
Research Abstract |
平成21年度では、平成20年度に引き続いて、選択的5-HT_7受容体拮抗薬SB269970の脳室内投与がストレス適応形成に及ぼす影響について、行動薬理学的側面から詳細に検討した。また、ストレス適応形成時における脳内5-HT_7受容体の発現量ならびにERKのリン酸化レベルの変化と、それらに対するSB269970脳室内投与の効果についても検討した。 拘束ストレス刺激を単回負荷したマウスでは、高架式十字迷路試験や明暗試験における不安様行動や、尾懸垂試験における抑うつ様行動の亢進が認められた。これらストレス刺激に対して急性的に発現する情動的ストレス反応は、拘束ストレス刺激の慢性負荷により消失し、ストレス適応の形成が確認された。一方、拘束ストレス刺激の慢性負荷期間中に1日1回SB269970を脳室内投与したマウスではこれらストレス適応が形成されず、不安感受性の低下や衝動性の亢進を示唆する異常行動が認められた。 ウエスタンブロット法を用いて、ストレス適応を形成したマウスの各種脳部位における5-HT_7受容体の発現量およびERKのリン酸化レベルを定量したところ、ともに大脳皮質前頭部および海馬において有意な上昇が認められた。一方、これらの変化は、SB269970の脳室内投与によりストレス適応が障害されたマウスから得られた脳組織では認められなかった。尚、免疫組織学化学的手法を用いた検討では、大脳皮質前頭部および海馬における5-HT_7受容体とリン酸化ERKの共局在が確認された。 以上の結果より、ストレス適応の形成機構において大脳皮質前頭部および海馬における5-HT_7受容体-ERK連関系が重要な役割を担っており、この機構の障害が慢性ストレス状況下で出現する情動異常の一因となっている可能性が示唆された。
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