2008 Fiscal Year Annual Research Report
腸管に存在する好酸球様樹状細胞の生理的意義と経口免疫寛容誘導機序の解明
Project/Area Number |
19790085
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
形山 和史 Osaka University, 薬学研究科, 助教 (10391913)
|
Keywords | アレルギー / 粘膜免疫 / 好酸球 / 免疫寛容 |
Research Abstract |
昨年度の解析結果からマウスの腸管粘膜固有層に存在する好酸球様樹状細胞は、腸管組織中の好酸球であるという結論が得られた。従って本年度は、好酸球欠損マウスの免疫学的解析および好酸球特異的に発現が認められる免疫応答調節分子群の発現解析を中心に、腸管組織好酸球が経口免疫寛容を調節している可能性について解析した。抗原とアジュバントを経口的に投与した場合に、好酸球欠損マウスでは野生型マウスに比べて抗原特異的抗体産生の上昇が認められた。また、腸間膜リンパ節細胞を用いた抗原再刺激実験においても好酸球欠損マウスのリンパ球が高い増殖能を示し、腸管組織好酸球は腸管免疫応答を負に制御している可能性が示された。一方、好酸球欠損マウスと野生型マウスの経口免疫寛容誘導能について評価したところ、予想に反して両者に顕著な差は観察されなかった。経口免疫寛容を調節していると考えられる細胞種は他にもその存在が知られている(例えば形質細胞用樹状細胞など)。好酸球欠損マウスでは、他の細胞種の分化と性質は野生型マウスと同等であることから、腸管組織好酸球の欠失を補完する細胞の影響により、予想した結果が得られなかった可能性が高い。種々の組織好酸球を含む30種類の血球細胞の網羅的遺伝子発現解析結果から、他の細胞群に比べて好酸球で有意に高い発現パターンを示す数十の遺伝子群を同定することに成功した。その中には免疫応答を制御する可能性が高い遺伝子も含まれていたことから、腸管組織好酸球が腸管免疫応答を制御している可能性を証明できる分子が含まれている可能性も高く、現在それらの詳細な解析を進めている。以上、本研究では腸管組織好酸球の性状を知る上での重要な知見を蓄積することに成功した。本知見を基礎としたさらなる解析を遂行することで、経口免疫寛容の誘導機序を明らかとし、アレルギーを始めとする疾患の新規治療法開発に貢献することが期待される。
|