Research Abstract |
今年度は,哺乳動物セプチンの生理機能解明を目指し,まず,5種類のセプチン(Sept6,Sept7,Sept8,Sept9.Sept11)のラット組織における発現を,私共が作製した特異抗体を用いたウェスタンブロット法により解析した。その結果,これらのセプチンは,すべて脳組織に発現しており,特に,Sept6およびSept8は脳組織に選択的に発現していることがわかった。また,胎生期から生後発達期におけるセプチンの発現変化を同様に検討したところ,Sept8は,生後発達に伴って顕著に増加することがわかった。そこで,Sept8に着目し,初代培養ラット海馬神経細胞での局在を蛍光抗体法で検討したところ,シナプトフィシンの局在と非常によく一致していた。さらに,脳神経系におけるSept8の機能を明らかにすることを目指し,酵母two-hybrid法によりSept8結合蛋白質を検索した。その結果,シナプス小胞膜に存在し,神経伝達物質の放出に関与するVAMP2が陽性クローンとして同定された。Sept8とVAMP2の結合は,COS細胞過剰発現系を用いた免疫沈降法で確認できた。変異体を用いた解析により,Sept8はVAMP2の膜貫通領域と結合することが明らかとなった。VAMP2は,シナプトフィシンに結合し,シナプス小胞への局在化や,シナプス小胞上での局在制御されていることが知られている。そこで,シナプトフィシンとVAMP2の結合に対するSept8の影響について検討したところ,Sept8はシナプトフィシンとVAMP2の結合を抑制することがわかった。これらのことから,Sept8は,神経細胞のシナプスにおいて,シナプトフィシンとVAMP2の結合を制御することを介して,神経伝達物質の放出過程で何らかの役割を果たしていると考えられた。
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