2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境ホルモンの脳かく乱作用の発現を予防する環境因子の同定とその分子機構の解明
Project/Area Number |
19790107
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
副田 二三夫 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 助教 (10336216)
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Keywords | 環境 / プロテオーム / 環境化学物質 / Arih1 / mtHSP70 / 海馬 / 学習・記憶 / GIRK2 |
Research Abstract |
本年度は、まずジエチルスチルベストロール(DES)の脳かく乱作用の修復に必須である「エンリッチ環境」の脳内分子機構について正常マウスを用いて解析した。その結果、内向き整流性カリウムイオンチャネルのうちG蛋白質共役型であるGIRK2はエンリッチ環境で飼育したマウスの海馬において選択的に増加すること、その増加は飼育期間に依存して増大することがわかった。また、研究代表者らが以前、DESの脳かく乱作用の発現に関与することを見出したmtHSP70の発現レベルも同様に検討したが、正常マウスにおいては、エンリッチ環境による影響は受けないことがわかった。次に、プロテオミクスの手法を用いてDESの脳かく乱作用の修復に関与する分子を網羅的に解析した。胎仔期DES暴露マウスをスタンダード環境またはエンリッチ環境で飼育し、受動的回避反応試験を行ったマウスの海馬を用いて二次元電気泳動を行った。画像解析の結果、発現タンパク質の総数は両群間で変動しないこと、上述したmtHSP70は、著しい変動ではないがエンリッチ環境飼育により減少することがわかった。また、両群間で発現レベルの著しい変動を示した分子は4つ存在し、ペプチドマスフィンガープリント法による解析の結果、そのうちのひとつはArih1と同定された。この分子はエンリッチ環境飼育により減少するタンパク質であり、その詳細な機能は不明であるが、既報においてこの分子はユビキチンリガーゼ(E3)として作用する可能性、神経細胞を用いた実験において、この分子は酸化ストレスの影響を受けやすいことが報告されている。以上、本年度の研究により、環境ホルモンDESの脳かく乱作用の修復メカニズムに数種の分子が関与していることがはじめて明らかとなった。本知見は丸今後の脳かく乱作用の発現の予防や治療に関する研究基盤の構築に貢献し得ると考えられる。
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Research Products
(4 results)