2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト有機カチオントランスポータの変動と薬物動態学的重要性
Project/Area Number |
19790123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本橋 秀之 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (30359822)
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Keywords | トランスポータ / 腎 / 薬物動態 |
Research Abstract |
本研究はカチオン性薬物の腎排泄において重要な役割を果たす膜輸送タンパク(トランスポータ)のヒト腎臓における発現変動について精査し、薬物排泄能との関連について明らかにすることを目的とした。前年度までにヒト正常腎皮質において有機カチオントランスポータ(hOCT)群中、hOCT2の発現量がもっとも高いことを明らかにした。さらに、内因性のカチオンであるN-methylnicotinamideの尿中排泄クリアランス比がhOCT2のみと有意な相関を示すことを明らかにするとともに、N-methylnicotinamideがhOCT2の基質であることなどを、発現系をもちいて確認した。本年度はさらに症例を追加し、前年度に得られた成果について確認をおこなった。さらに、これらカチオン性薬物の排泄速度に関連する影響因子の探索および同定を試みた。N-methylnicotinamideの尿中排泄速度は腎機能検査値であるクレアチニンクリアランスと有意な相関を示した。一方、アニオン性薬物であるフェノールスルホンフタレインの消失速度との相関係数は低く、これらの結果はカチオン排泄能の変動がアニオン排泄能の変動と一部相関しない可能性を示唆している。また、hOCT2発現量とhOAT3発現量との相関も必ずしも良好ではなく、これらは前述のN-methylnicotinamideの尿中排泄速度とフェノールスルホンフタレインの消失速度との関係に対応すると考えられた。さらにhOCT2発現量との対応を示す検査値を探索したが、hOCT2発現量を反映する良好なマーカーを見いだすには至らなかった。本研究では、カチオントランスポータの薬物尿中排泄における重要性を明らかにした。これらの成果は臨床薬物動態学的に有用な知見と考える。
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