2008 Fiscal Year Annual Research Report
難水溶性抗がん剤の新規エマルション製剤化による臨床的付加価値の多面的付与
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19790125
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大河原 賢一 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (30291470)
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Keywords | 製剤学 / ドラッグデリバリー / エマルション |
Research Abstract |
本研究課題において、生体適合性の高いパクリタキセル内封エマルション製剤の処方を三種類見出すことができた。これら三種のエマルションからのパクリタキセルの放出速度は、いずれも遅いものであったが、Emulsion Dからのパクリタキセルの放出が他の二種と比較して速いことが示された。また、腹水がんモデルマウスにおいてEmulsion Dを投与したマウスにおける顕著な生存日数の延長が示され、これらのことよりEmulsion Dの速い放出特性がその高い抗腫瘍効果に結びついたものと考えられた。さらに固形がんモデルマウスにおいては、エマルション間では顕著な差は認められなかったものの、いずれのエマルション製剤も腫瘍増殖を有意に抑制することが明らかとなった。これらの結果は、調製したパクリタキセル内封エマルション製剤が種々のがんに対して有効性を発揮する可能性を示唆している。今後はより広範な腫瘍モデルを用いて、パクリタキセル内封エマルション製剤の有用性を明らかにしていく予定である。これら一連の検討結果を理論的に整理することにより、本研究課題において標榜していた、(1)パクリタキセルの溶解性の改善、(2)過敏症発生の抑制(製剤の安全性の担保)、(3)放出速度制御による抗がん作用の持続化、(4)標的組織へのデリバリー効率の改善による抗がん作用の増強、(5)他臓器への移行性を低下させることによる副作用の低減を、適切に達成することが可能となり、本化合物に対して臨床的な付加価値を多面的に付与できると考えられた。
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