2008 Fiscal Year Annual Research Report
ネトリン受容体DCCの細胞表面移行を介した大脳皮質ニューロン軸索分岐の調節
Project/Area Number |
19790157
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松本 英子 Saitama Medical University, 医学部, 助教 (00312257)
|
Keywords | 神経回路形成 / 大脳皮質ニューロン / 軸索ガイダンス / 軸索分岐形成 / 軸索シャフト / ネトリン-1 / DCC / エキソサイトーシス |
Research Abstract |
軸索ガイダンス因子ネトリン-1は、発生過程における神経回路形成の際、種々のニューロンにおいて軸索の伸長/誘引/反発/分岐形成などの多様な機能を発揮する。大脳皮質ニューロン軸索の分岐形成には、成長円錐を介して分岐が生ずる様式と、シャフトに生ずる糸状仮足が分岐へと発達する様式との二通りが知られ、ネトリン-1は後者を刺激するといわれる。一方、脊髄交連ニューロンでネトリン-1受容体DCC(deleted in colorectal cancer)は細胞内の小胞に局在し、エキソサイトーシスによる細胞表面DCCの増加によって軸索伸長が増強されることが知られている。本研究ではハムスター新生仔由来の大脳皮質ニューロン初代培養系を用いて、ネトリン-1による軸索分岐形成に、小胞輸送を介したDCCの細胞表面移行が関与するか否かを検証することを目指した。 30分間のネトリン-1刺激を行った際、軸索シャフトでは糸状仮足数の増加が認められ、ニューロンは軸索分岐形成の前段階にあるものと考えられた。細胞表面DCCの分布とレベルの変化について免疫染色像の定量的画像解析を行ったところ、シャフト表面ではネトリン-1刺激に応じてDCCがクラスター様の構造を形成し、これに伴ってDCCのレベルが上昇することが判明した。この変化はエキソサイトーシスの阻害剤である破傷風毒素により妨げられた。一方、成長円錐表面においては変化が認められなかった。 大脳皮質ニューロンの細胞内にもDCC小胞が存在し、この小胞がネトリン-1刺激に応じエキソサイトーシスを介して細胞表面に移行することにより、細胞表面におけるDCCの分布とレベルの調節が行われるものと考えられた。またDCCの細胞表面移行は、ネトリン-1の引き起こす、シャフトから糸状仮足を経て分岐が生ずる様式の軸索分岐形成に関与することが示唆された。
|