2009 Fiscal Year Annual Research Report
狂犬病ウイルスを用いた大脳皮質での立体視情報処理機構の解剖学的解明に関する研究
Project/Area Number |
19790162
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤村 裕正 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (70444081)
|
Keywords | 大脳皮質視覚領域 / 狂犬病ウイルス / 立体視 |
Research Abstract |
立体視に用いられる視覚情報は頭頂葉を中心とする背側経路で主に処理されると考えられてきた。近年、側頭葉を中心とする腹側経路でも情報処理が行われているとの報告があり、従来の枠組みを超えた視覚情報処理システムについての知見が得られてきている。しかしながらこれら複数の領域にまたがる2つの経路の機能連関については、未だ明らかになっていない点が多い。本研究では霊長類であるマカクサルを対象とし、神経生理学的及び神経解剖学的手法を駆使した統合的アプローチを用いて大脳皮質における立体視情報の視覚処理システムの機能連関の解明を目指した。 背側経路の一部を構成するMTと腹側経路を構成するV4を電気生理学的に同定した後、蛍光色素及び逆行性トレーサーである狂犬病ウイルスを注入した。狂犬病ウイルスを注入し、生存期間を変化させることにより、2次ニューロン結合、3次ニューロン結合を解析した。MTに狂犬病ウイルスを注入した場合ではV1の4Cα層と2次ニューロン結合が認められた。一方、V4に注入した場合にはV1の4C層とは2次ニューロン結合が認められず、3次ニューロン結合がV1の4Cα、4Cβ双方の層に認められた。さらに外側膝状体との結合を調べた所、MTとは二次ニューロン結合が認められ、V4とは三次ニューロン結合が認められた。MT、V4いずれに注入された場合も外側膝状体で標識された細胞は(M)層、(P)層双方に認められた。V4とV2とのニューロン結合を検討した所、背側経路に位置すると考えられるV2のthick stripeとも二次ニューロン結合が認められた。以上の結果よりMTとV4とが背側・腹側経路の中で異なった階層に位置する可能性があること、MT、V4共に外側膝状体との間に"バイパス"経路が存在する可能性があること、V4は背側・腹側経路の双方の入力を受けていることが示唆された。
|