2008 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド性神経伝達物質の遊離機構の分子基盤と遊離制御システムの解明
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19790189
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
唐 和斌 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (10403502)
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Keywords | COX-1 / -2 / Dorsal root ganlion neurons / MAP kinases / Nav1.8 / Neurokinin-1 receptor / PKC / SP release / TRPV 1 |
Research Abstract |
本年度は、(1)CCIモデルマウスを利用し、DRG細胞におけるsubstance P(SP)の合成と遊離機構、(2)DRG細胞においてのneurokinin-1受容体作動薬によるcapsaicinで誘発されたSP遊離の促進作用機序と(3)DRG細胞においての抗がん剤治療薬パクリタキセルのSP遊離作用の作用機序について検討を行った。 (1) 野生型マウスのDRG細胞と比べ、Na_v1.8ノックアウトマウスのDRG細胞において、capsaicinあるいはKClによるSP遊離量が有意に少ないことが示された。また、野生型マウスと比較すると、Na_v1.8ノックアウトマウスのL6 DRGにおいてはSP含有量が有意に少なかった。さらにCCI施術(坐骨神経結紮)後、野生型マウスと比べ、Nav1.8ノックアウトマウスのL4-6 DRGではpreprotachykinin-A(PPT-A)mRNA量が半分以下になった。また、CCI施術された野生型マウス反対側のL6 DRGにおいてNa_v1.8発現増加とCCI施術された野生型マウスとNa_v1.8ノックアウトマウスのL6 DRGにおいてNK-1Rの内在化が観察された。これらの結果は、Na_v1.8の削除がDRGニューロンから有害な刺激で誘発されたSP遊離を減衰させて、また、野生型マウスのL6 DRGのSPの局部合成の減少の原因となるのを示す。 (2) DRG細胞において、NK-1Rを介したNK-1R作動薬(SPとGR73632)前処置によるcapsaicinで誘発されたSP遊離の促進作用は、NK-1RとTRPV 1の各特異的な拮抗薬によって完全に阻害され、また、protein kinase C(PKC), p38, p42/44 MAP kinases及びCOX-2活性の阻害剤によって有意に抑制された。さらに、NK-1Rを介したNK-1R作動薬前処置によるPKC依存のTRPV 1のSer800リン酸化を確認し、NK-1R活性によるcapsaicinで誘発されたSP遊離の促進作用にはTRPV 1のSer800リン酸化が必要であることを明らかにした。 (3) DRG細胞において、パクリタキセルがPKCβを活性化し、TRPチャンネルによる細胞外Ca^<2+>流入を引き起こし、SP遊離を増加した原稿は現在レビュー中である。本研究では神経ペプチドの動態を神経薬理的側面からSP合成と遊離機構の分子基盤を明らかにしながら、知覚神経が関与する疾患などの治療法や新たな治療概念の構築などが大いに期待できる。
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Research Products
(2 results)