2007 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞成長因子の異常とニトロ化ストレス誘発糖尿病性血管障害の病態機序の解明
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19790197
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
小林 恒雄 Hoshi University, 薬学部, 講師 (90339523)
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Keywords | 糖尿病 / 血管内皮細胞 / 活性酸素 |
Research Abstract |
糖尿病時における高インスリン血症は、血管障害を誘発し、その一つとして血管内皮機能障害を生じる事が知られているが、詳細なメカニズムは明らかではない。活性酸素の一つsuperoxideは、NOを不活化することにより内皮機能を傷害することが知られているが、近年superoxideとNOが反応して生じるperoxynitriteも弛緩機能の障害などが報告されている。器官培養を用いた糖尿病血管へのインスリン処置は、a) AChによる内皮依存性弛緩反応、Angeli's salt (NO ドナー)による平滑筋弛緩反応の減弱を生じる。一方、コントロール血管では、インスリンによる弛緩の減弱は認められない。b) peroxynitriteもしくはsuperoxide scavenger処置によって、この弛緩反応の減弱への効果は抑制される。c) ACh刺激によるNO産生は低下した。d) superoxide、 nitrotyrosineの増加が認められた。e) SERCAタンパクにおけるnitrotyrosine量の増加が認められ、peroxynitrite scavengerにより抑制された。以上のことから、糖尿病状態の血管と高濃度のインスリンが共存する状態において、内皮依存性、非依存性弛緩反応の減弱を生じる。その原因としては、ONOO-増加による内皮NO産生の低下、SERCAのニトロ化によるSERCA機能不全の可能性が考えられる。また、糖尿病ラットにおいて活性酸素の増加は、ET-1が関与していることが知られているが、今回、ET-1の発現には、転写因子であるAP-1の増加が認められ、ピオグリタゾンはNO産生には影響なく、AP-1構成サブユニットのc-Jun発現を低下してET-1産生を抑制することでsuperoxide産生酵素であるNAD (P) Hoxidase活性を抑制する一方で、そのスカベンジャーであるSOD活性を増加させるという二面性の機序により、酸化ストレスを軽減し、NOのバイオアベイラビリティーを増加することによって内皮依存性弛緩反応の減弱を改善することを明らかとした。以上の実験結果から、糖尿病時や高インスリン血症時には、活性酸素であるsuperoxide、 peroxynitriteの増加によって血管障害を生じる。また、ピオグリタゾンはこれらの産生を低下させることによって、糖尿病性血管合併症を予防できる可能性を示唆する。
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