Research Abstract |
高比重リボ蛋白(HDL)は,心筋梗塞をはじめとする動脈硬化性疾患の防御因子であるため,その機能の増強が疾患の予防に大きく貢献することが予想される。しかしながら,このHDLの主要な構成蛋白のひとつであるアポリポ蛋白AII(アポAII)は,未だにその機能が明らかにされていない。そのため我々は,アポAIIの役割を明らかにするために,ヒトのアポAIIを過剰発現した,アポAIIトランスジェニック(Tg)ウサギを開発した。平成19年度の研究では,このTgウサギの特徴を明らかにすることで,アポAII機能を検証した。我々が開発したアポAII Tgウサギは発現量の異なる3系統(アポAII濃度;6.8,13.6,26.8mg/dl)が存在し,これらの血中脂質を解析した結果,アポAII濃度依存的に,ウサギの血中総コレステロールおよび中性脂肪濃度が増加傾向にあることを見出し,また逆に高比重リボ蛋白(HDL)コレステロールは,アポAIIが高値のウサギほど低値になっていること,が判明した。このことから,我々の開発したヒトアポAII過剰発現ウサギは,複合型高脂血症の特徴を有していることが明らかになった。さらに詳細なリポ蛋白分画解析を行なったところ,本モデルのコレステロールおよびトリグリセリドの増加は,主として超低比重リポ蛋白(VLDL)および中間比重リポ蛋白(IDL)が含有するコレステロールおよびトリグリセリドの割合が多いことに由来することが判明した。一方でHDLコレステロールの低下は,HDLI分画の中でも特に比重の高く粒子サイズの小さいHDLである,HDL3のコレステロール含量が低下しているために生じたものと考えられた。
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