2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790229
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
岡本 貴行 Mie University, 大学院・医学系研究科, 助教 (30378286)
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Keywords | ギャップ結合 / 血管内皮細胞 / 炎症 / 血液凝固 / 炎症性血管病変 / 血管内皮機能 |
Research Abstract |
研究の意義 近年、血管内皮の慢性的な炎症と血液凝固能の活性化を基盤とする心筋梗塞や脳梗塞、静脈血栓症などの血管障害性疾患が増加している。こうした炎症性血管病変の適切な診断法や治療法は無く、それらの開発には、正常な血管内皮が持つ抗血栓機構と、その破綻の分子機構の解明が不可欠である。本研究成果は血管障害性疾患の診断や治療に応用することで国民の福祉と健康の増進に大きく貢献できると考えられる。 研究の目的 これまでファージディスプレイ法を用いて内皮細胞にギャップ結合を構成するConnexin(Cx)32が発現することを見出した。私は、ギャップ結合が血管内皮細胞の機能の維持と破綻に与える影響を調べ、炎症性血管病変発症に至る分子機構の解明を進めている。本研究では、Cx32が内皮機能と病態形成に及ぼす影響に焦点を絞り、炎症性血管病変発症におけるCx32の機能解析を目的としている。これまでの研究成果に基づき、最終報告を提出する。 研究成果 本研究では各種内皮細胞でのCx32の発現を解析し、主に大血管に発現量が多く、微少血管では発現量が少ないことを明らかにした。内皮細胞におけるCx32の発現量は、腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β刺激により減少した。Cx32強制発現細胞では、TNF-α刺激で分泌されるIL-6や単球走化活性因子(MCP-1)の量が抑制された。一方で、抗体を用いてギャップ結合を阻害すると、逆にIL-6やMCP-1の量が増加した。また、ギャップ結合の阻害時にはTNF-αに誘導される組織因子の発現が増強されることを明らかにした。これら結果は、内皮細胞に発現するCx32が炎症や血液凝固など内皮機能の制御を行い、炎症性血管病変の発症に関与することを示しており、血管障害性疾患に対する新たな治療薬、診断薬の創出において重要な分子である可能性を示唆した。
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