2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790253
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂谷 貴司 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (50431903)
|
Keywords | 腫瘍 / 消化器 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
タンパク質をコードしないnon-coding RNA(ncRNA)の一つでるmicroRNA(miRNA)組織や発生時期に特異的な発現様式を示したり、腫瘍においては発生・進展をはじめとする種々の機構に関与している。miRNAは分子標的治療のターゲットとなりうる可能性があり、癌における発現様式を解析することは意義があると考える。また、miRNAは時空間的に制御されることから、DNAメチル化やヒストンのアセチル化などのエピジェネティックな変化による遺伝子発現との間に機能の相同性があり、両者間には相互作用機序が関与している可能性が考えられる。 まず、胃癌培養細胞株にEBウイルスを感染させ、感染細胞株とoriginalの培養細胞株を用いてmicroRNA arrayによる解析を行った。MKN1, MKN7の2種類を用いた検討を行い、EBウイルス感染の有無によって発現動態を同じくするmiRNAを数個同定した。ターゲット遺伝子をデータベース上で検索したところ、細胞接着因子であるE-cadherinがターゲット遺伝子の一つとして検索された。免疫組織化学およびWestern blotにてE-cadherinの発現を検討すると、ある種のmiRNAが減弱している感染胃癌培養細胞株では、E-cadherinの発現が低下し、形態学的には感染胃癌培養細胞株はoriginalの培養細胞株に比べ、細胞接着が減弱していた。以上の結果より、EBウイルス感染によって、ある種のmiRNAがdownregulateされ、ターゲット遺伝子であるE-cadherinの発現減弱を惹き起こし、形態学的変化を生じると考えられた。EBウイルス関連胃癌はやや低分化な組織像を示すにもかかわらず、通常の低分化な癌と比べると悪性度の低いことが知られており、ある種のmiRNAの減弱によってもたらされる形態学的変化は、胃癌の組織亜型を考える上での、新たな知見と思われる。現在は胃癌および非癌部組織標本からダイゼクションを行い、miRNAの発現解析を行っている。また、EBウイルス関連胃癌は、高頻度にメチル化を受けていることが知られており、E-cadherinもその一つであることから、エピジェネティクスとの相互作用の解析については、5-aza-dC処理を行った細胞株を用いて、E-cadherinとmiRNAの発現検討を進めているところである。
|