2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト変形性関節症軟骨におけるRECK分子の発現と機能解析
Project/Area Number |
19790269
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木村 徳宏 Keio University, 医学部, 助教 (40445200)
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Keywords | 関節 / 軟骨 / 変形性関節症 / 細胞外マトリックス / 細胞生物学 |
Research Abstract |
ヒト変形性関節症軟骨組織に発現するRECK分子の、病態における役割を明らかにするために、今年度は発現誘導因子、細胞-マトリックス相互作用のモデルとしての細胞伸展(cell spreading)、細胞形態、細胞運動、増殖の観点から解析を行った。ヒト変形性関節症軟骨組織から単離した軟骨細胞(OA軟骨細胞)において、各種サイトカインによるRECKの発現調節について調べた結果、IGF-1が発現促進因子であることがmRNAレベルおよびタンパクレベルで明らかになった。RECKを標的としたsiRNAの導入によりRECK発現を抑制したOA軟骨細胞(RECK-siRNA細胞)とnon-silencing RNAを導入した対照(control細胞)を用いて、培養皿上での細胞伸展を定量化して比較すると、RECK-siRNA細胞では伸展が有意に抑制された。また、RECK-siRNA細胞では細胞形態が細長くなり、アクチンストレスファイバーが平行に走行する像が認められた。細胞の遊走能を評価するためにmonolayer wounding assayを行ったところ、RECK-siRNA細胞ではcontrol細胞に比べ遊走能が亢進しており、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤のBB94によりその遊走は部分的に抑制された。BrdUとり込みアッセイによる細胞増殖の比較では、RECK-siRNA細胞はcontrol細胞より増殖能が低下しており、BB94を加えてもその差は変化しなかった。 以上の結果から、RECK分子はヒト変形性関節症軟骨においてIGF-1の影響下で高発現し、細胞-マトリックス相互作用を変化させ、細胞遊走を抑制するとともに増殖を促進する機能を有することが示唆され、変形性関節症軟骨の特徴的病変のひとつである「軟骨細胞のクローニング(cloning)」の形成に関わっている可能性が考えられる。
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