2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19790271
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 永一 Tokyo Medical University, 医学部, 助教 (60408101)
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Keywords | 卵巣癌 / 乳癌 / 膀胱癌 / 腫瘍免疫 / T細胞 / HLA class I / 制御性T細胞 / マクロファージ |
Research Abstract |
手術によって摘出された卵巣癌および乳癌, 膀胱癌の組織検体(ホルマリン固定・パラフィン包埋標本)を用いて研究を遂行した. 細胞傷害性T細胞のマーカーであるCD8陽性リンパ球の浸潤, 抑制性のT細胞であるreguratory T細胞, さらに癌細胞抗原提示に必須であるHLA class I蛋白の発現を免疫組織化学を用いて検出した. また樹状細胞, マクロファージ系のCD68陽性細胞, CDla陽性細胞の浸潤も同時に評価した. 浸潤する免疫担当細胞の計数結果, およびHLA class Iの腫瘍細胞膜上での発現率をもとに, 生存率解析を施行した. 卵巣癌と膀胱癌ではCD8陽性T細胞が多い群では予後が良好であることが確認された. 卵巣癌では, CD68陽性のマクロファージがCD8陽性T細胞と同時に浸潤している群で予後が良好であるものの, CD68陽性細胞を欠く群ではCD8陽性T細胞の浸潤と予後の相関が不明瞭であった. これは癌細胞が発現している抗原を樹状細胞系が認識することで免疫学的な記憶が惹起されることを示唆している. HLA class Iの発現やregulatory T細胞の浸潤, 癌細胞でのHLA class Iの発現はCD8陽性T細胞の浸潤と相関するが, それぞれの因子単独では癌患者の予後と相関していなかった. 何らかの抗原が発現していること, HLA class Iが発現していること, 抗原を記憶した免疫担当細胞が浸潤していることの3条件がそろっている群でのみ免疫反応が予後に影響を与えるものと想定される. 興味深いことに乳癌では他臓器腫瘍での先行報告に反して, CD8陽性TILがより多い群では生命予後が不良であった. 乳癌においてもHLA class Iの発現, Tregの浸潤, 樹状細胞系の免疫担当細胞の浸潤数はそれぞれCD8陽性TILの浸潤数と正の相関を示したが, いずれも予後との相関は認められなかった. 乳癌では, 癌のグレードやエストロゲン, プロゲステロン受容体の発現, Her2の発現等, より複雑な局所での免疫反応が存在することが想定された.
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Research Products
(5 results)