2007 Fiscal Year Annual Research Report
大腸がん浸潤先進部におけるがん間質相互作用に関する分子機構の研究
Project/Area Number |
19790275
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
深澤 由里 National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East, 病理部, 研究員 (90392331)
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Keywords | 病理学 / 癌 |
Research Abstract |
ヒト大腸がんにおけるがん間質相互作用の発現解析を行うため,ヒト大腸がんの手術検体より,がんの浸潤先進部が含まれる凍結標本を作製し,レーザーマイクロダイセクション法によりがん間質のみを回収した。組織学的に,腺管構造が保持されているがん周囲の間質をType1, 腺管構造が崩れ脱分化傾向を認めるがん周囲の間質をType2と分類し,各群10例ずつ症例を選び,上記の形態学的特徴を有するがん間質組織のみを回収した。回収した組織より抽出したRNAをサンプルとしAffymetrix社のGene Chip(HumanU133 Plus2.0)による発現解析を施行した。得られたデータを遺伝子発現データ解析ソフトウエアであるExpressionistを用い,fold値2倍以上,p<0.05の条件から567遺伝子を選び出した。候補遺伝子の中で著明な差を認める遺伝子について,定量的PCRにてvaridationを行った。定量的PCRにて有意な差を認めた遺伝子に対し,ヒト大腸がん組織切片(ホルマリン固定パラフィン包埋切片または凍結切片)を用い,候補遺伝子のコードするタンパク質に対する抗体で免疫組織化学染色を行った。Type1と比較しType2で発現の高い候補遺伝子の中には,間質の線維芽細胞や血管内皮細胞に発現を認める分子と共に,腫瘍の浸潤先進部の低分化傾向を示す腫瘍細胞に強く発現を認める分子も複数認められた。そのうち,ケモカインの一つであるCXCL12(またはSDF-1:stromal derived factor-1)は,間質にも弱い発現を認めるが,大腸がん細胞により強い発現を認めた。臨床経過のおえるヒト大腸がん症例のホルマリン固定切片を用いた免疫組織化学的検討を行い,大腸がん細胞において,CXCL12高発現症例は,CXCL12低発現症例と比して,有意に予後不良であることが示された。またその他の臨床病理学的因子との検討を行い,リンパ節転移および深達度と共に独立した予後予測因子となることが示された。
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