2007 Fiscal Year Annual Research Report
発がんリスク評価を目指した諸臓器の前がん状態におけるDNAメチル化異常の研究
Project/Area Number |
19790276
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
新井 恵吏 National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East, 病理部, 研究員 (40446547)
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Keywords | DNAメチル化 / 多段階発がん / 前がん状態 / 腎細胞がん / 肝細胞がん / BACアレイ / BAMCA法 |
Research Abstract |
本研究は,前がん状態におけるDNAメチル化異常の意義の理解を進めることを目的としている。平成19年度には,通常型腎細胞がん症例51例・肝細胞がん症例25例の手術材料を病理診断に供した残余の検体より,がん組織ならびにがんの背景にある非がん組織をコンタミネーションなく収集した。正常対照として,尿管がんに対する腎尿管摘出術などで切除された腎組織や大腸がん肝転移などで切除された肝組織を収集した。これらの組織より高分子量のDNAを抽出し,BACアレイを基盤としたメチル化CpGアイランド増幅法(BAMCA法)によりゲノム網羅的なDNAメチル化解析を行った。 腎細胞がん・肝細胞がんいずれにおいても,正常組織に比して担がん症例の非がん組織で既にゲノム規模のDNAメチル化異常が認められた。ゲノム規模のDNAメチル化異常を示すBACクローンの数は,がんでさらに増加していた。持続する肝炎ウイルス感染を伴う慢性肝炎や肝硬変症は,ゲノム規模のDNAメチル化異常を伴う前がん状態にあると考えられた。腎細胞がんの背景にある非がん腎組織は,組織学的に特記すべき所見を示さないにも関わらず,DNAメチル化に着目すると前がん状態として認識し得た。前がん状態にある非がん組織の教師なしクラスター解析を行い,より悪性度の高いがんを生じる可能性のあるDNAメチル化プロファイルを抽出した。正常組織と前がん状態にある組織のDNAメチル化プロファイルを比較し,両者を区別するのに最も有用なDNAメチル化の変化を示すBACクローンの候補を抽出した。 平成19年度のゲノム網羅的解析により,DNAメチル化異常を伴う前がん状態からより悪性度の高いがんを生じる可能性が示されたので,平成20年度には,臨床検査としての実用化を目指し,発がんリスク評価の指標となるDNAメチル化プロファイルの同定を継続する。
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