2008 Fiscal Year Annual Research Report
がん染色体不安定性の要因としての中心体サイクル制御機構異常に関する研究
Project/Area Number |
19790286
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
新村 和也 Hamamatsu University School of Medicine, 医学部, 准教授 (40321880)
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Keywords | P53 / 中心体 / 中心体過剰複製 / B[a]PDE / 染色体不安定性 / がん抑制遺伝子 / hSgol / 中心体サイクル |
Research Abstract |
1. ベンゾピレン代謝産物B[a]PDEは、喫煙者肺がんにおいて、がん抑制遺伝子p53の体細胞変異誘導の原因の一つと考えられている。私達は、B[a]PDEの肺がんへの更なる関与の可能性を考え、p53欠損肺がん細胞株H1299を用いて、中心体数、染色体数への影響を検討した。H1299にB[a]PDEを処理すると、S期停止が起こり、中心体過剰複製が誘導された。また、トランスリージョンDNAポリメラーゼPOLKを過剰発現させると、B[a]PDE誘発中心体過剰複製が抑制された。B[a]PDE処理後数日後に染色体FISH解析を行うと、中心体過剰複製誘導を介したと考えられる染色体不安定性誘導が認められた。さらに、原発性肺がん検体での解析で、p53が変異している場合に、B[a]PDE蓄積と中心体過剰複製との間に関連性が認められた。以上のことから、B[a]PDEは、これまで報告されている遺伝子突然変異誘導のみならず、中心体過剰複製誘導を介した染色体不安定性誘導により、肺がんに関わっていることが示唆された。2. 正確な染色体分離が行われる上で重要な役割を果たす分子として同定されたヒトシュゴシン(hSgol)の大腸がんにおける関与を検討し、次の結果を得た。1)原発性大腸がん患者の腫瘍部のhSgolの発現はmRNAおよび蛋白質レベルで低下していた。2)hSgolのmRNA発現レベルの低い大腸がんは左側大腸に局在し、染色体FISH解析での観察で染色体数の変化に富んでいた。3)大腸がん細胞株HCT116におけるhsgolの発現をsiRNA法で低下させたところ、G2/M期停止、中心体過剰複製、染色体不安定性が誘導された。以上のことは消化器がんにおけるhSgolの変化とその関与についての初めての報告である。3. 中心体局在配列の安定発現株、および、その変異体安定発現株を樹立した。
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