2007 Fiscal Year Annual Research Report
組換え特異抗原を基盤としたエキノコックス感染イヌの血清診断システムの開発
Project/Area Number |
19790310
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
孝口 裕一 Hokkaido Institute of Public Health, 感染症センター生物科学部, 研究職員 (50435567)
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Keywords | 蛋白質 / 遺伝子 / バイオテクノロジー / エキノコックス / 寄生虫 / 組換え抗原 |
Research Abstract |
現在、イヌのエキノコックス症の診断には感染したイヌの糞便中に存在する寄生虫由来の分泌/排泄物を免疫学的に検出する手法が主に用いられている。ところがエキノコックスの成虫は感染したイヌから自然に排出されてしまう場合があり、このような場合のイヌの検体は偽陰性と判定されてしまう恐れがある。また、飼い主や試験実施者が糞便を扱う際に感染の危険も伴う。本研究では、イヌの糞便ではなく、血清を用いる診断法を開発するため、感染イヌの抗体価を上昇させるような(結果として血清診断に利用できるような)タンパク質を探すことにした。 エキノコックスの幼虫を実験的にイヌに感染させ、虫卵を排出する成虫にまで発育させた。この成虫からmRNAを抽出し、それを基にcDNAライブラリーを構築した。分離された多数の遺伝子(およそi200クローン)の塩基配列を調べているうちに、寄生虫の細胞内プロテアーゼ(カテプシン)やヒートショックプロテインに類似した蛋白質、膜表面に発現する事が示唆される、ある種のタンパク質がそれぞれ見いだされた。これらのタンパク質が、感染したイヌの血清中の抗体価を上昇させているかを調べると、5頭感染させたイヌ全ての血清中にそれぞれのタンパク質に対する特異抗体の存在が確認された。このことから、イヌの血清診断法を開発するに当たり、今年度見いだしたそれぞれのタンパク質は有望な候補になると考えられた。さらに、本研究の趣旨からはわずかに逸脱するが、マウスに免疫すると、エキノコックスの虫卵感染における感染率を有意に抑制させるタンパク質を見いだした。これは、エキノコックスのワクチンとして使用できるかもしれないタンパク質が見いだされたことを意味する。 今後さらにこれらのタンパク質の性質を調べ、組み合わせていくことで、エキノコックス生活環を鑑みた全体の制御システムを考えていく予定である。
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