2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌CagA蛋白によるβーカテニンシグナル活性化機構の解明
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19790312
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
紙谷 尚子 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 助教 (40279352)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 胃癌 / CagA遺伝子 / β-cateninシグナル |
Research Abstract |
cagA遺伝子を保有するCagA陽性ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)はCagA陰性ピロリ菌と比較して胃癌発症の危険率を有意に高める。これまでに、CagAはE-cadherinとの結合を介してE-cadherin/β-catenin複合体形成を阻害する結果、β-cateninシグナルを活性化することを見いだした。本年度は、(1) 前癌病変である腸上皮化生誘導におけるCagAの関与の解析及び(2) CagAの分子多型とβ-cateninシグナル活性化能の関連性の解析を行った。 (1) ヒト胃上皮細胞由来のCagA安定発現株を用いてCagA陽性ピロリ菌の長期持続感染をin vitroで再構成した。その結果、CagAが胃上皮細胞において腸上皮分化マーカーCdx1及びMUC2の発現を誘導することを見いだした。さらに、CagAはβ-catenmシグナルの活性化及びp21^<WAF1/Cipl>の誘導を介して胃上皮細胞を腸上皮細胞に異常分化させることを示した。 (2) 欧米型CagA(ABC型)と東アジア型CagA(ABD型)では、β-cateninシグナル活性化能に差は認められなかった。また、CagAのCサイト及びDサイト近傍に共通に存在する16アミノ酸配列(CM配列)がβ-cateninシグナル活性化に必要な責任領域であることを見いだした。これまでに、CM配列はCagAの多量体形成ならびにCagA-PARlb複合体形成の責任領域であることを報告している。従って、CagAによるβ-cateninシグナル活性化の分子機構にPARlbが関与している可能性が示唆された。また、CagAのβ-cateninシグナル活性化能はCagAの基本的生物活性であり、すべてのCagA分子種が前癌病変とされている腸上皮化生を引き起こす能力を保有していることが示唆された。
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Research Products
(4 results)