2008 Fiscal Year Annual Research Report
リステリア感染におけるToll様受容体を介した自然免疫応答の誘導機序の解析
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19790319
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 晃介 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (50437216)
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Keywords | リステリア / トル様受容体 / サイトカイン / 自然免疫 / 細胞内寄生細菌 / ガンマー・インターフェロン / MyD88 / 多重欠損マウス |
Research Abstract |
Toll-like receptor(TLR)は宿主による病原体の認識に関わる分子群として同定された。また、ほぼ全てのTLRのアダプター分子であるMyD88は、TLRが下流のシグナル伝達経路を活性化するのに必須な役割を果たし、MyD88欠損マウス由来のマクロファージは多くのPAMPsに不応答性を示す。MyD88欠損(KO)マウスはグラム陽性の細胞内寄生菌であるリステリアに感受性を示すが、グラム陽性菌の細胞壁認識に重要なTLR2を欠損するマウスは野生型マウスと同程度の抵抗性を示すことから、複数のTLRがMyD88依存的な防御機構に関わっていると考えられるが、各TLRの重要性は明確でない。そこで、リステリア感染における各TLRの役割を明らかにするため、複数のTLRを欠損するマウスを作製し、種々の解析を行った。その結果、TLR2 KOマウス、TLR9 KOマウスおよびこれらを同時に欠損したマウスではリステリア感染に対する抵抗性の低下がみられなかった。また、防御に必須な役割を果たすIFN-γの産生応答は、感染1日後にはTLR2およびTLR9に依存的であったが、感染3日後にはこれらのTLRに依存していなかった。さらに、IL-12およびIL-18はIFN-γ誘導性サイトカインであるが、IL-12の産生応答はTLR2およびTLR9に依存していたのに対してIL-18はTLR非依存的に誘導された。IL-18のレセプターはMyD88依存的に下流にシグナルを伝達するため、TLR非依存的に誘導されるIL-18がTLR2およびTLR9の非存在下におけるIFN-γ産生応答および宿主防御に補償的に働く可能性を考え、次にTLR2、TLR9およびIL-18を欠損するマウス(TKO)を作製した。TKOマウスではMyD88 KOマウスと同程度にリステリア感染におけるIFN-γ産生応答が低下しており、若干の感受性亢進がみられた。しかし、MyD88 KOマウスはTKOマウスよりはるかに高い感受性を示した。結果から、リステリアに対する宿主防御は、MyD88依存的に働く複数の防御因子が補償的に働くことで強固に保たれることがわかった。感染症を多面的に解析する重要性が確認され、細胞内寄生細菌に対する防御機構の理解に役立つと考えられる。
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